サンスクリット語の仏教写本をめぐって

サンスクリット語の仏教写本をめぐって

未知の古典研究資料は世界中に眠っている

日本の各地にあるお寺には多数の古文書が眠っており、中にはまだ未知の文献も含まれています。それらを読み解くことで、今まで知られていなかった思想や歴史が明らかになる可能性があります。
インド仏教の研究資料についてはどうでしょうか? インド仏教の研究資料である経典や論書は、中国やチベットで数多く翻訳されてきましたが、インドの古典語であるサンスクリット語の資料はほんの一部しか現存していません。1999年にチベット自治区ラサ市のポタラ宮で大乗仏教の経典である『維摩経(ゆいまきょう)』のサンスクリット語写本が発見され、大きなニュースとなりました。それまで、『維摩経』のサンスクリット語テキストについて部分的な引用は知られていましたが、完本の写本は失われていたと考えられていたからです。この発見により『維摩経』の研究も進み、その和訳によってその教えが再び注目されるようになりました。

13世紀にインドから消えた仏教

仏教発祥の地であるインドにイスラム教が入ってくると、13世紀には仏教はインドから消え去ってしまいました。インド仏教は周辺国のチベットやネパールに伝承されました。その結果、インドの周辺国にサンスクリット語の仏教文献写本が残されてきたのです。そのような写本を読み解くことで、インドにおける仏教の思想内容や歴史的背景を明らかにできるのです。

最新技術を駆使した古典研究

最近は古典研究の世界でも電子化が進んでいます。たとえば、多くの古写本の画像がインターネット上で公開されるようになってきています。その画像を参照して研究を行うこともできます。
インド仏教の研究においても、サンスクリット語写本の画像やデジタルテキストが公開されつつあります。それらは、最新のデジタルスキルを活用していくための重要な素材となっています。

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大正大学 仏教学部 仏教学科 准教授 米澤 嘉康 先生

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メッセージ

私は高校時代の途中までは法学部志望でした。しかし、法律よりも哲学に興味が移り、大学の文学部で哲学を専攻することにしました。哲学を学ぶことで、それまで当たり前だと思っていたことが実はそうではないかもしれないことや最新の考えだと思っていたことの多くは先人たちがすでに思い至っていたことに気づき、自分の視野の狭さを知りました。
高校では、勉強に限らず趣味でも部活でもなんでもいいので、打ち込めるものを見つけてください。視野を広げることは、きっと将来の役に立つでしょう。

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大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。