この曲知ってる! ナポリ方言の歌からひも解く文化と歴史
ナポリ方言による歌の世界
ナポリ方言は、イタリア語とは異なる独自の言語で、長らくナポリの人々の暮らしに根付いてきました。その方言で歌われるナポリの歌は、19世紀後半から20世紀前半に「カンツォーネ・ナポレターナ」と呼ばれるポピュラー音楽として花開き、ラジオを通じて広く親しまれるようになります。日本でもよく知られる「サンタ・ルチア」「オ・ソーレ・ミオ」「フリクリ・フニクラ」といった歌はカンツォーネ・ナポレターナであり、ナポリ方言の歌です。カンツォーネ・ナポレターナは、現代でもポップスやロック、ヒップホップなどさまざまなジャンルのアーティストがカバーして世界中で歌い継がれています。
ナポリ文化が映し出す人々の姿
こうしたナポリの歌や文学は、そこに暮らす人々の多面的な精神性を色濃く反映しています。一般的にナポリ人というと、陽気で開放的なイメージがあるかもしれませんが、実は内向的で閉鎖的な面も持ち合わせています。自分たちのアイデンティティを誇りに思う一方で、外国人の期待に合わせてイメージ通りの「ナポリ人」として振る舞うこともあります。このようなナポリ人の複合的なメンタリティは、都市ナポリの栄枯盛衰の歴史からの影響をうかがわせます。
ローカルな文化と世界とのつながり
ナポリは14世紀から19世紀のイタリア統一までの間、ナポリ王国の首都として栄え、18世紀まではロンドンやパリに次ぐ大都市でした。しかし、イタリア統一後は一転して一地方都市となり、かつての栄華は影を潜めます。こうした歴史の明暗がナポリ人のメンタリティに影響を与えて、彼らは自分たちの方言や文化を大切にし続けていると考えられます。
また、カンツォーネ・ナポレターナの起源と発展の過程をひも解けば、そこにはナポリの歴史だけでなく、近代化やメディアの発達といった社会の大きな変化も関わっていたことがわかります。ローカルな文化を研究することは、実はその時代の世界の動きを知ることにもつながっているのです。
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先生情報 / 大学情報
京都外国語大学 外国語学部 イタリア語学科 教授 近藤 直樹 先生
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ナポリ文化史先生への質問
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