きょうだいは平等か? 社会調査から見るきょうだい間の違い
きょうだいの間に生じる差
同じ家庭に生まれても、きょうだいの数や生まれてきた順番によって、その人の学歴や職業に差が生じることを知っていますか。家族社会学や教育社会学、社会階層論といった研究分野では、こうしたきょうだい間で生じるさまざまな差や傾向について研究しています。これまでの調査では、きょうだいの中で初めに生まれた子はその弟や妹よりも学歴が高いことがわかっています。またきょうだいの数が少ない家庭は、そうでない家庭よりも子どもが進学しやすいことや、特定の職業においては、長男が親と同じ職業に就く割合が高いことも明らかになっています。
データによる分析
研究では、主に社会調査(アンケート調査)によって得たデータを統計的に分析することで、きょうだい間の差を明らかにします。例えばきょうだいの人数やそれぞれの性別、年齢差や学歴、職業、そして親の職業や学歴、世帯年収といった項目を設けて、得られた回答を数値化し、専用の統計ソフトを用いて分析します。これまでの調査では、1人目の子どもにかけられる教育投資は2人目以降よりも高い傾向にあること、また子どもの頃に「きょうだいに物事を教える経験」が多かった子は、そうでない子よりも学歴が高いことなど、さまざまなことが統計的に明らかになっています。
分布によって明らかにする
私たちは普段、きょうだいの間の違いについて意識することは少なく、また進学や就職についても「個人の資質」「努力次第」であるという認識が一般的です。しかし、上に紹介した調査ではきょうだい構成によって一定の違いが見られることが示されています。もちろん、家庭によって教育にかけられるコストや考え方は千差万別ですから、進学や就職の状況をひとくくりにして論じることはできません。それでもデータ分析によって得られた客観的な分布は、子育て世帯の保護者が子どもに教育を施すうえで、あるいはより平等な教育行政・支援のあり方を考えるうえでも、非常に有用な気づきを与えてくれます。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 准教授 苫米地 なつ帆 先生
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