講義No.12372 社会福祉学

ソーシャルワーカーの、一人ひとりへの関心と気づき、声掛け

ソーシャルワーカーの、一人ひとりへの関心と気づき、声掛け

「しつけ」と正当化する背景にある孤立感

児童虐待の課題と支援は、子どもたちに関わる社会福祉士・精神保健福祉士などのソーシャルワーカーにとって避けて通れない問題のひとつです。虐待死に至った子の保護者の事件後の言葉を裁判などから分析すると、「虐待ではない、しつけをしていた」という発言が100%近くにのぼります。殺意があったのではなく、子育てに悩み孤立していく中で、虐待がエスカレートしていき、感覚が麻痺して重大な結果に至った経緯がわかります。今後は民法が改正されしつけのための体罰は禁じられます。

ちょっとした異変に気づき、声をかける技術

悲惨な事件を予防するには、家庭を見守っている児童相談所の判断による「介入」も必要ですが、介入以前の手だてが実は重要です。保護者や子どものサインを見逃さず、異変に気づく周囲の人々やソーシャルワーカーの存在が、重大なことになる前に状況を変えることもできるのです。例えば朝食を食べていない親子や清潔を保てていない子どもの親に、「ちゃんとしているか」と詰め寄るのではなく「疲れていませんか?」と親身な声掛けをすることで、親が「実は……」と口を開くきっかけが生まれ、そこからソーシャルワークが始まります。一人ひとりへの関心と気づき、声掛けがソーシャルワークの一歩です。

「子どもと家庭」が対象

児童養護施設等には現在、約3万人の子どもが生活しており、毎年3000人ほどが入れ替わります。死亡や重度の障害が残る重篤例は年間100例以下ですから、児童相談所の介入によって保護され守られている子どもの方が多いのです。ソーシャルワーカーが子どもに関わる場合、以前は「児童福祉」が中心でしたが、現在は「児童と家庭の福祉」に変わりました。虐待をする保護者も、機能不全家庭の環境で育っている場合や、発達に課題を抱えながら周囲に理解されないまま親になる場合があります。問題のある家庭でも見守られ、ソーシャルワークの支援を受け、気づきを得て、母親・父親のモデル像を持つことで改善が望まれます。

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帝京平成大学 人文社会学部 人間文化学科 福祉コース 准教授 齋藤 知子 先生

帝京平成大学 人文社会学部 人間文化学科 福祉コース 准教授 齋藤 知子 先生

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メッセージ

人と関わることが好きで、毎日同じことの繰り返しよりも、変化があるほうが楽しいと思えるあなたは、ソーシャルワークの分野に向いています。もちろん、高校生のあなたがそこまで思えなくても、大学ではグループワークなどを行う実践的な学びの機会が多くあるので、大学4年間で一緒に勉強していきましょう。友達関係が上手にできないとか、他者との交流が苦手という人も、コミュニケーションのおもしろさを体験する機会がなかっただけかもしれません。友達づきあいができる自分になりたいというあなたの入学も歓迎します。

先生への質問

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首都圏の4つのキャンパスには、あなたの学びたい思いに応える医療からグローバルまで5学部18学科の学びがあり、約10,000人の学生が学んでいます。各キャンパスでは“実学”を徹底的に重視した教育や実践の場を用意。地域の医療や暮らしに関する拠点となる施設・環境を整え、学びに応じた実学教育を展開。学生は実習を積み重ね、キャリアに直結する実践能力を身につけます。