ソーシャルワーカーの、一人ひとりへの関心と気づき、声掛け
「しつけ」と正当化する背景にある孤立感
児童虐待の課題と支援は、子どもたちに関わる社会福祉士・精神保健福祉士などのソーシャルワーカーにとって避けて通れない問題のひとつです。虐待死に至った子の保護者の事件後の言葉を裁判などから分析すると、「虐待ではない、しつけをしていた」という発言が100%近くにのぼります。殺意があったのではなく、子育てに悩み孤立していく中で、虐待がエスカレートしていき、感覚が麻痺して重大な結果に至った経緯がわかります。今後は民法が改正されしつけのための体罰は禁じられます。
ちょっとした異変に気づき、声をかける技術
悲惨な事件を予防するには、家庭を見守っている児童相談所の判断による「介入」も必要ですが、介入以前の手だてが実は重要です。保護者や子どものサインを見逃さず、異変に気づく周囲の人々やソーシャルワーカーの存在が、重大なことになる前に状況を変えることもできるのです。例えば朝食を食べていない親子や清潔を保てていない子どもの親に、「ちゃんとしているか」と詰め寄るのではなく「疲れていませんか?」と親身な声掛けをすることで、親が「実は……」と口を開くきっかけが生まれ、そこからソーシャルワークが始まります。一人ひとりへの関心と気づき、声掛けがソーシャルワークの一歩です。
「子どもと家庭」が対象
児童養護施設等には現在、約3万人の子どもが生活しており、毎年3000人ほどが入れ替わります。死亡や重度の障害が残る重篤例は年間100例以下ですから、児童相談所の介入によって保護され守られている子どもの方が多いのです。ソーシャルワーカーが子どもに関わる場合、以前は「児童福祉」が中心でしたが、現在は「児童と家庭の福祉」に変わりました。虐待をする保護者も、機能不全家庭の環境で育っている場合や、発達に課題を抱えながら周囲に理解されないまま親になる場合があります。問題のある家庭でも見守られ、ソーシャルワークの支援を受け、気づきを得て、母親・父親のモデル像を持つことで改善が望まれます。
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先生情報 / 大学情報
帝京平成大学 人文社会学部 人間文化学科 福祉コース 准教授 齋藤 知子 先生
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