講義No.15288 看護学

母親だけじゃない? 実は身近で対象が広い「母性看護学」

母親だけじゃない? 実は身近で対象が広い「母性看護学」

変わってきた出産育児の環境

時代とともに出産育児を取り巻く状況が変わってきました。例を挙げると、出産を控えた妊婦の体重が減少してきたことです。若い女性の「やせ」の割合が高くなっているという背景がありますが、母親の体重が少ないと産まれる赤ちゃんの体重も少なくなる傾向があります。またSNSなどでは、母乳で育てることが、実際以上に「大変なもの」と伝わっているようにも思われます。リズムができてくるまでは大変な時期もありますが、母乳には赤ちゃんの免疫力を高める機能もあります。母乳とミルクのメリットとデメリットを考えてみることが大切です。

妊娠中の体の使い方、育児の基本を学ぶ

さらに近年は出産育児の教室に、夫婦で参加する人たちも増えてきました。教室では、例えば妊婦の体の使い方として、物を拾う時は腰を痛めないように一度しゃがんでから拾う方法を伝えます。この時、父親にも重さ7キロの妊婦ジャケットを着けてもらい、妊婦の生活を体験してもらうこともあります。また、赤ちゃんに触れたことがない、という人々も多くなっています。そのため、何が正常で何が異常なのかという基本から、抱っこやお風呂の入れ方など日常の育児方法も学びます。事前に知っておくことで安心感が得られ、赤ちゃんを楽しみに待つ気持ちが生まれてくるのです。

家族・社会全体で子どもを育てる

これらの知識や技術の指導にあたるのが看護や医療分野の専門職で、その根幹となるのが「母性看護学」です。母性と名が付くため妊娠・出産・育児をする母と子が対象と思うかもしれませんが、決してそれだけではありません。次世代の子どもたちを健康に育てるためには、乳児の母親・父親・祖父母などの家族や地域社会のサポートが欠かせないので、そのすべてが対象です。また将来、健全な出産をするために、思春期の月経不順・望まない妊娠・性感染症などに対して、その本質を学び、対処方法を考えることも含んでいます。これらの問題は、高校生にとって決して縁遠いことではありません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 教授 安成 智子 先生

宇部フロンティア大学看護学部 看護学科 教授安成 智子 先生

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母性看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

母性看護学は、母親だけではなく、父親を含めた家族全体・地域全体で子どもを育てるという視点で次の世代を考えていく学問で、母親以外のいろいろな人が関わる余地のある分野です。日々のニュースを見てみると、出生率の低下、子どもの虐待、不妊治療など、母性看護に関わるニュースは多分野にわたります。ですから看護分野をめざすなら、専門分野の勉強以外にも、本や新聞を読んだり、周囲の人や家族と過ごして話をしたり、いろいろな経験をして、視野を広げるようにしてください。

宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。