デジタル空間では取引が減る? 買い手と売り手の信頼を築くには
アタリ社のゲームはなぜ売れなくなった?
1980年代初頭、アメリカではアタリ社が家庭用ゲーム機を販売していました。このゲーム機の特徴は、第三者が自由にゲームソフトを作ることができるようゲーム機の仕様がオープンにされていたことでした。この結果、多くの会社がアタリ社のゲーム機用のソフトを作りましたが、品質の低いゲームも続々と出荷されました。多くの低品質のゲームに直面した消費者は「アタリのゲームは品質が悪い」と考え購入を控えるようになりました。この結果、アタリ社のゲームが売れなくなってしまう事態が引き起こされました。
デジタル空間での取引の課題
この背景には、ゲームの売り手はその品質を知っているのに対して、買い手は品質を知りえないという情報の非対称性の問題があります。このとき、ゲームの買い手は、購入したゲームが低品質となることを恐れ、本当は高品質のゲームに対しても購入を躊躇します。この買い手の行動は高品質のゲームの取引量を減少させ、市場は低品質のゲームだらけになってしまいます。この現象を経済学では「逆選択」と呼んでいます。インターネット上のビジネスでも逆選択が起こりえます。デジタル空間では商品の品質を知ることが困難だったり、取引相手の顔が見えないため、売り手も買い手も信頼して取引ができるのかと不安を感じるからです。この課題を解決して市場を活性化させようと、企業はさまざまな対策を講じます。例えば、店の利用者が口コミを投稿する「レビュー」です。レビューを見た買い手が、その店やサービスを利用するか判断します。
フェイクレビューを防ぐには
レビューには課題もあります。レビューを偽る人もいるからです。サイトを提供する企業も対策を試みています。例えば、人工知能を使ってレビューがフェイクかどうかを判断する仕組みの導入です。フェイクには一定の特徴があるため、その特徴に当てはまるレビューを弾くことができます。ほかにもどのような対策が効果的か、その対策は市場にどう影響するかなど、研究が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
神戸市外国語大学 外国語学部 国際関係学科 教授(学長) 田中 悟 先生
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