「冷える」と「冷める」の違い? 日本語の「隠れた」ルールを考える
日本語の「隠れた」ルール
あなたは「私は田中です」と「私が田中です」の違いや、「さっき着いたばかりだ」「さっき着いたところだ」の違いについて考えたことがありますか? 実は、日本語には気が付きにくい、隠れたルールが存在します。
例えば「~が冷える」と「~が冷める」を比べた場合、どのような違いがあると思いますか。一般的には「常温のものが低温になる」場合に「冷える」を、「高温のものが常温になる」場合に「冷める」が使われると言われています。しかし、調べてみると、「冷える」はお腹や手足といった身体部位に使われることが多く、「冷める」は熱や気持ちといった抽象的な名詞に使われることが見えてきました。
データベースを活用する
こうした細かな用例の違いを明らかにするために活用されているのが「コーパス」です。コーパスには、書籍や雑誌、新聞などの書き言葉のデータを集めたものもあれば、日常会話や雑談などの話し言葉を集めたものもあります。つまり、コーパスとは、多様なジャンルの言葉を集めてデータベース化したものと言えます。これによって、ある言葉がどんな場面で、どんな表現とともに用いられているのかといった、よりリアルな使われ方が客観的にわかるようになってきており、日本語の研究には欠かせないものとなっています。
日本語を外国語として捉える
日本語の隠れたルールについては、日本語と中国語を比較することでも明らかになります。例えば「発生」という名詞は、日本語では「事件の発生」や「被害の発生」といったネガティブな名詞に使われることがコーパスを使った調査で明らかになりました。一方、中国語にも「発生」という名詞がありますが、こちらは日本語ほどネガティブな名詞とは結びついていません。同じ名詞であっても、日本語と中国語では結びつく名詞が変わるのです。
外国語を研究するような視点で日本語を捉えること、データベースを活用して日本語の隠れたルールを明らかにすることは、日本語研究における重要なテーマとなっています。
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神戸女学院大学 文学部 総合文化学科 教授 建石 始 先生
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