講義No.11804 経済学

時期によって土地を譲り合う? 多民族共生を考える

時期によって土地を譲り合う? 多民族共生を考える

アフリカで一番の経済大国

約2億人の人口を抱えるナイジェリアは、アフリカ大陸で一番の経済大国です。比較的過ごしやすい温暖な気候で、油田などの資源に恵まれています。映画産業や金融など新たな分野も発展し、2014年にGDPが南アフリカ共和国を上回りました。経済学的視点からアフリカ地域を見るときには欠かせない、勢いのある国だといえます。
そんなナイジェリアは、複数の国や民族がイギリスの植民地支配によってひとつに統合された歴史を持っています。そのため農耕民と遊牧民といった多民族の共生が社会を支えてきました。

農耕民と遊牧民の共生

西アフリカを流れるニジェール川流域には「ミドル・ベルト地帯」と呼ばれる地域があり、農耕民と遊牧民が暮らしています。ミドル・ベルト地帯の気候は1年の約半分が乾期で、残りの半分は雨期です。限られた土地を有効に活用するため、乾期は遊牧民が牛に草を食べさせ、雨の降る時期は農耕民が農業をしています。
時期によって土地を譲り合う方法は、どちらの民族にもメリットがあります。遊牧民は、収穫後に畑に残った草をもらえるため、牛のえさを探す手間が省けます。牛が畑にフンをすれば、農耕民は休耕中の畑に栄養を蓄えることが可能です。ナイジェリアでは化学肥料や機械のような近代的な農業が発展していないため、自然から得られる肥料が重宝されています。

社会の変化と衝突

伝統的な共生を続けてきた農耕民と遊牧民ですが、関係が悪化する事例も見られます。例えば農業でも重宝されている牛の価値が高まり、都市部の資本家や政治家が牛の飼育を始める事例が増えました。干ばつなどで牛を失った遊牧民を雇い、放牧を任せます。ただし資本家たちはビジネスとして牛を飼っているだけで、農耕民たちとの伝統的な共生を重視しません。その結果、牛が農耕民の畑を荒らすなどの問題が生まれています。社会や環境の変化によって生じる多民族の衝突をどうしたら解決できるのか、さらなる研究が求められています。

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専修大学 経済学部 国際経済学科 准教授 傅 凱儀 先生

専修大学 経済学部 国際経済学科 准教授 傅 凱儀 先生

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国際経済学、アフリカ地域研究

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メッセージ

世界に目を向け学びましょう。理論や方法論を学んだうえで外国を訪れると、ただの旅行ではわからない人々の生活に気づきます。きちんと準備をして帰国後に振り返れば、一段階上の海外での学びになるはずです。
また、身の回りにある機会を積極的に活用してほしいです。大学は海外訪問や留学などのチャンスを提供しています。国際交流プログラムや英語での発表などにも取り組むことが可能です。こうした機会を活用しないのはもったいないので、ぜひ挑戦してみましょう。

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専修大学は、1880年(明治13年)に経済科と法律科からなる専修学校として創立されました。「経済科」は日本初の、また「法律科」は私学で初の高等教育機関でした。2024年に創立145年を迎える、日本でも屈指の伝統を持つ大学です。社会科学、人文科学、総合科学、の3系統、8学部20学科からなる社会人文系総合大学として、「自ら問題を見つけ主体的に解決する知力」と「人間力」、「倫理観」を持った人材を育成しています。まずはオープンキャンパスの大学紹介や模擬授業に参加して、大学の雰囲気を体感してみてください。