音楽の授業はセッションだ! 鍛えられた「アドリブ力」の正体

もっと自由で創造的になるために
例えば「象の鼻くそはどこにたまるの?」も、子どもたちの想像力を刺激する問いです。正解のない問いには多様な考えが生まれて活発な対話が広がります。日本の音楽教育では「正解を教える」ことにとらわれる教師もいて、それ故に「音楽の授業は苦手」と感じる子どももいます。しかし、音楽の本質は自由な解釈と表現です。問いを通じて子どもたちの創造性を引き出して、教師も共に学ぶ姿勢が必要です。
こうした音楽教育の研究は、柔軟な思考を持つ教師の育成がねらいです。自分の音楽を大切にして、他人の音楽も尊重できる教師が増えれば、音楽の授業がより創造的で豊かな体験になるでしょう。
授業が面白くなる「問い」
即興性のある授業で特に重要なのが、「問い」の力です。ベテランの教師は、音楽の奥深さを引き出して、子どもたちの創造性を高める問いを絶妙なタイミングで投げかけます。「問い」には3つのタイプがあります。1つ目は「質問」で「あなたの好きな曲は?」など、相手の情報を聞き出すものです。2つ目は「発問」で「この音は高い? 低い?」など、子どもの思考を促すものです。3つ目が最も重要で、「ベートーヴェンの『運命』の冒頭に、なぜ八分休符があるの?」といった、正解のない問いです。こうした問いを通して音楽を深く考えることで、理解が深まり、豊かな表現につながります。
授業は台本なしのジャムセッション
音楽の授業は、ただ指導案通りに進める「型にはまった授業」ではありません。その場の空気を感じ取りながら展開していく、まるでジャムセッションのような即興性が特徴です。熟練した音楽の教師は、場の雰囲気を素早く読み取り、言葉かけやピアノ伴奏、身ぶりや表情など、その場に合ったアドリブを繰り出します。こうした力は「実践知」と呼ばれ、状況判断や選択といった深い思考が支えています。音楽教育の研究では、このような熟練教師の思考に注目して、誰もが音楽を楽しく教えられる方法を探っています。
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