人の行動データを読み解き、よりよい観光に生かす
動物園の来場者の満足度を高めるには?
GPSを使って、ある動物園の来場者の行動を調べたところ、その多くが動物を見学するよりも休憩に時間をかけていたことがわかりました。すなわち、動物の展示だけではなくレストランや休憩スペースを充実させることも、来場者の満足度を向上させるためには大いに効果があると推測できます。このように、人の動きを分析すると、いろいろなことがわかってきます。
新しい学問の可能性
「観光地理学」とは、観光という現象を地理学の視点から分析しとらえようとする学問です。その調査のひとつとして「空間分析」、つまりGIS(地理情報システム:空間にまつわるさまざまな情報を一つの地図上に表示するシステム)を用いた人の流れの解析があります。どこにいた人が、どんな動機を持って、どんな手段で、どこに移動しているのか、そこで何をするのか、といった情報は、観光地や地域、商業施設など、あらゆる空間の活用のためのヒントになります。活用といっても、来場者数が多ければ多いほどよいというわけではありません。オーバーツーリズムといって、観光客が増えすぎることで地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼし、問題になった観光地も多くあります。
空間分析を観光に活用する
ではどうするかといえば、空間分析で人々の動き方の解読を進めていくと、将来的には、人の行動の予測もできるようになるでしょう。そのデータを利用して、訪問客が分散するよう誘導できれば、来訪者数の集中的な増加を回避できます。また、観光地側の「あまり知られていないけど、このスポットは○○が美しい。見ごろになるこの時期に来てもらえたらいいのに」という要望と、観光者の「いま、○○が魅力的なところに行きたい」といった願望を、スムーズにマッチさせ、誘導することも可能になるかもしれません。観光者と観光地の両方にとってのよりよい観光のかたちを、地理学分野の分析からつくっていくことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 有馬 貴之 先生
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観光地理学、観光学、地理学、社会工学先生が目指すSDGs
先生への質問
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