未来の空の交通網を担うエアモビリティは無人ヘリコプターから

未来の空の交通網を担うエアモビリティは無人ヘリコプターから

農薬散布や山間部の資材運搬に活躍

「エアモビリティ」とは、ドローンやヘリコプターなど、垂直に離着陸できて、人やモノを、空を飛んで運ぶ交通手段のことです。陸路ではできないことも可能になるため、現在、盛んに研究が行われています。
その中でも無人ヘリコプターは、農業での農薬散布や、車では不便な山間部の工事現場への資源輸送にすでに使われています。また、災害時の物資輸送を行うための実証実験も計画されています。
空の物流を担う手段として、この無人ヘリコプターは現在では最適と考えられており、これを改良してさらに多くのものを素早く運ぶための研究開発が進んでいます。

もっとたくさん、もっと高速で運ぶために

無人ヘリコプターは、コンピュータのプログラム通りの経路を通って自動で飛べるまでには開発が進んでいます。目下の課題は、運べる荷物の重量や速度を上げることです。最近の研究で、エンジンはそのままで、ローター(回転する羽根の部分)を大きくすることで、積載重量を以前より10kg増やすことができました。
現在は、もっと高速で飛べるようにローターや機体の形の研究が行われています。高速化で機体の挙動がどう変わるかが不明なため、コンピュータでシミュレーションを行いながら、最適な形を探っています。高速移動が可能になれば、時間も燃料も節約できます。

空の交通網実現に向け電動化エアモビリテも視野に

また、無人ヘリコプターを進化させた電動化エアモビリティの研究されています。都市部の上空を多くのエアモビリティが飛ぶようになれば騒音問題が起こると予想されるため、エンジンではなく音が小さいモータで動くものが求められており、バッテリーの性能が上がれば、実現の可能性も高まります。
また、エアモビリティが普及すれば、安全性を確保するルール作りや法整備も大切です。自動車に車検制度があるように、エアモビリティの安全性も客観的に証明する必要があります。どのような証明方法がよいのか、安全な空の交通網実現に向けて検討が始まっています。

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先生情報 / 大学情報

静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 教授 佐藤 彰 先生

静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 教授 佐藤 彰 先生

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ヘリコプタ工学、制御工学、運動解析

メッセージ

人生には思い通りにならないことはありますが、いいことの後には悪いことがあり、悪いことの後にはいいことがある、「人間万事塞翁が馬」ということわざもあります。私も希望の企業で希望の研究職についたものの、その部署がなくなってしまいました。しかし、それがきっかけで今の研究ができています。また、同僚は希望の研究職につけず、与えられた仕事をやっているうちに重役になりました。たとえ希望がかなわなくても、次の幸運に巡り合うチャンスだと思って頑張ってください。挫折は人を強くするものです。

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静岡理工科大学は静岡県西部の袋井市にキャンパスがある、私立の理工系総合大学です。
理工学部(機械工学科・電気電子工学科・物質生命科学科・建築学科)と情報学部(コンピュータシステム学科・情報デザイン学科)を有し、2020年にはデータサイエンス専攻を開設しました。
さらに2022年4月には理工学部に「土木工学科」を新たに開設。
社会のニーズに応えるべく、常に変わりつづけ、地域社会で活躍する技術者を育成する大学です。