古生物学者が化石から種を特定するまで
発見者と同定者が異なるケースも
中生代、白亜紀後期の恐竜時代の温暖な海に住んでいた大型の脊椎動物「フタバスズキリュウ」は、分類上恐竜ではなく首長竜です。1968年に福島県で高校生の鈴木直さんが発見しました。それまで日本では恐竜や首長竜の化石がほとんど出ていなかったので、再調査で新種とわかるまで、40年近く待たなければなりませんでした。このように、化石の研究では発見者と同定者が異なる場合もあります。
古生物学者の調査手順とは
化石の発掘は日本では断片的なものが多いのですが、フタバスズキリュウの場合は約70%の骨格がそろっていました。保存状態も良かったといえます。全長は推測で7~8メートル。古生物学者の仕事は、「この骨は首が長い方の種類の首長竜の首の骨だ」といったことを決めるのが第一段階です。どんな化石の研究もそこから始まります。フタバスズキリュウの場合は、エラスモサウルス科の新属新種だと解明され、2006年に「フタバサウルス・スズキイ」と学名が付きました。今は生きていない大きな生物であり、生きているのを見ることができない変わった形の生物が、過去に実在していました。まさに生物の多様性といえます。古生物学とは、過去に栄えていた恐竜や首長竜の時代があり、今はぜんぜん違う生物がいるという面白さに直接触れられる研究です。
外国の博物館へも足を運ぶ
日本で発掘された化石を比較調査するための標本は外国の自然史博物館などが保管していることが多く、古生物学者は基本的に現地へ足を運んで調査します。アメリカやカナダの大きな博物館では標本を管理するコレクションマネージャーがいて、窓口になっています。近年ではCTによる検査技術が進化して、日本でも化石の骨の組織を調べる研究が進みました。石に埋まった化石でも調べられます。例えば、骨の密度によって水生適応度が違うので、ある化石の生物がどのぐらい水生適応していたかもわかるのです。
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神奈川大学 理学部 理学科 教授 佐藤 たまき 先生
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