空気力学の観点から風力発電のさらなる進化をめざす
風力発電の今
環境配慮や気候変動問題などへの対策として、再生可能エネルギーの活用は世界的なテーマです。太陽光や地熱、水力などと並んで、風力発電は重要な位置を占めています。すでに多くの風車施設が建設され、発電を行っているものの、火力など既存の発電システムを代替していくためには、より多くの施設が必要です。実用化が進む一方、どこに風車を建設するのがいいのか、どのような構造にするとエネルギー効率がいいのか、地域によって最適な風車はどのようなものか、といった点については、さらなる知見が求められており、研究開発が活発に展開されています。
空気力学的観点からの模索
風力発電は、海に風車を設置する洋上風力と陸地に設ける陸上風力の大きく2つに分かれます。施設の大規模化により、近年は洋上風力が優勢ですが、海底に基礎を固定したり、係留した浮体上に風車を置いたりと、工事規模も大きくコストも高くなりがちです。
一方、コスト面では有利な陸上風車も、設置エリアの地形に応じて複雑な風が吹く難しさがあります。発電効率はもちろんですが、周辺環境への配慮も欠かせません。風車の開発では、空気の流れを人工的に発生させて空気抵抗等を測る風洞と呼ばれる装置が使われます。風洞実験により発電に最適な翼(羽根)形状などを追究し、それをスケールアップした風車を屋外に設置するなど、より優れた風車の開発が進められています。
新しい形の風車も
発電用風車のほとんどは、回転軸が水平で翼が鉛直面内で円を描くプロペラ式の風車です。これとはまったく違う、垂直方向の回転軸に対して水平面内で円軌道を描く「垂直軸風車」も提案されています。重心位置が低く安定した構造物として施工しやすく、風向きによる影響を受けない、低騒音であるといった特性から、都市地域での設置に向くと期待されています。まだ発電用風車としては歴史が浅く技術的な蓄積が乏しいこともあり、発電効率自体はプロペラ式の2分の1程度ですが、高効率で信頼性の高い風車実現に向けた研究が進行中です。
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先生情報 / 大学情報
三重大学 工学部 総合工学科 機械工学コース 教授 前田 太佳夫 先生
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