男女平等ではない!? 脂肪の話

男女平等ではない!? 脂肪の話

筋トレでメタボ予防

高校生に体格や体型についての悩みを尋ねたところ、男子の多くは「筋肉をつけたい」、女子の多くは「やせたい」と答えました。十代のうちに鍛えて身体に筋肉をつけると、将来太りにくくなり、メタボリックシンドロームを予防できます。
二十代前半は、男子はあまり太りません。ところが社会に出て、二十代後半から三十代になると、結婚や仕事の変化などを経験したりして、「幸せ太り」あるいは「ストレス太り」と呼ばれるように体重が増加し、お腹が出てきます。このような太り方は、狩猟生活をしていたはるか昔には、大切なことでした。なぜなら、お腹の脂肪は、すぐにエネルギーに変えられる特徴があるからです。しかし飽食の現代では、内臓に脂肪がつくのは好ましいことではありません。

ダイエットの恐ろしさ

一方、女性はお尻と太ももに脂肪がつきやすいとされています。脂肪の分布は性別によって異なるのです。男性と違って脂肪がついていても健康上、あまり問題はありません。問題はダイエットによる脂肪の減少です。
女性ホルモンは脂肪からつくられるため、体脂肪が10%以下になると女性ホルモンが不足し、月経がなくなります。また、やせ過ぎの状態で妊娠すると胎児が低栄養状態になり、胎児は自らの体内に栄養をためこもうとします。これを「代謝適応」と言います。2500g以下の未熟児(低出生体重児)として生まれた赤ちゃんは、体重を増やすためにたくさんのミルクを飲みますが、胎内にいたときからの習慣で栄養をためこもうとするため、すい臓に負担がかかり、糖尿病のリスクが出てきます。

必要な性差医療

このように病気のリスクや脂肪のつき方については、性差があります。心筋梗塞の薬は、これまで男性に多い心筋表面の冠動脈に作用するものだけでしたが、女性は心臓の奥の細い血管の異常で心筋梗塞が起こることがわかってきたため、治療に役立てられつつあります。
男女平等は現代では当たり前のことですが、身体に関しては、古くて新しいとも言える「性差医療」が認知されているのです。

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三重大学 教育学部  教授 冨樫 健二 先生

三重大学 教育学部 教授 冨樫 健二 先生

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運動生理学、健康科学、スポーツ医学

先生が目指すSDGs

メッセージ

よく食べて、よく寝る、そして、よくからだを動かすことが健康の基本です。これらは思春期から老齢期まで、変わらず大切なことです。夜遅くまで起きていて、朝ごはんを食べないようでは、きちんとした生活が送れません。規則正しい生活を送って、自分の夢へ向かって歩いていってください。私は小学校の教員、中学校の保健体育の教員をめざす学生たちと毎日を過ごしています。人にものを教えるのが好きな人、身体を動かすのが好きで、それを人にも伝えたいと思っている人に向いている分野だと思います。

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三重大学は、5学部を擁する総合大学です。教育・研究の実績と伝統を踏まえ、「人類福祉の増進」「自然の中での人類の共生」「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となるべく、切磋琢磨しています。