子育てをめぐる心理支援の重要性

子育てと心理的支援
日本の大きな社会的問題の一つに児童虐待があります。児童虐待は子どもの心に大きな傷を残してしまい、それが子どもの心の成長や健康を妨げてしまうことがあります。児童虐待は近年増加傾向にあり、その対策がますます必要とされています。虐待問題を解決していく上で、虐待を受けた子どもたちへの心理的支援が必要なことはいうまでもなく、虐待をしてしまった親への心理的支援も重要です。また、虐待ではないけれども、子どもとの関わり方が分からない、子どもと関わることが難しいと感じている親への心理的支援も子育て支援として非常に重要です。
子育て支援における2つのアプローチ
こうした子育てにまつわる問題に心理学は何ができるでしょうか。具体的には、次の2つのアプローチが考えられます。1つ目には親子関係をアセスメント(査定)することが挙げられます。例えば、親子が遊んでいる場面を観察したり、親子に面接したりすることで、親と子の心理的状態や関係性がどのような状態にあるのかを探っていきます。それにより、親子に対してどのような支援が必要なのかを考えていきます。2つ目は予防教育です。これは、不適切な関わりが生じる前や不適切な関わりが再発しないように子どもの心をケアしながら親に対して適切な関わり方を助言したり練習したりするものです。これらの心理学的な手法は、虐待問題解決への糸口を探ったり、子育て支援に役立つものといえるでしょう。
子育て支援の科学的研究は始まったばかり
近年では、虐待によって傷ついた子どもの心をケアするための心理的支援や虐待予防のための親を対象とした心理支援が多く開発されています。しかし、日本では子どもと親への心理支援に関する科学的研究は始まったばかりです。今後こうした研究が少しずつ積み重ねられ、より効果的な子育て支援のあり方が明らかにされていくことが期待されています。
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大阪教育大学教育学部 教育協働学科 心理科学部門 准教授山口 正寛 先生
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