会話の構造を分析すると仲間意識のレベルが見えてくる

会話の構造を分析すると仲間意識のレベルが見えてくる

人の体験談を聞かされたときにどう反応するか

「昨日、数学の宿題を忘れていったらさ、先生にすごく怒られちゃってとんでもない目にあったよ」と相手が話を切り出したとしましょう。これに対して、あなたが「実はうちのオヤジが数学の先生をやっていてさ、宿題をやってこない生徒がいたら片っ端から廊下に立たせてるらしいよ」と切り返したらどうなるでしょうか。
相手はあまり気分がよくないはずです。「その話し方って、もしかしておれにケンカ売ってんの」と反応することはあったとしても、「お前ってやっぱりおれのこと、よくわかってくれてるよな(うれしいよ)」と喜んだりすることはまずないでしょう。話の内容としては確かに相手のことばである「数学の宿題」や「先生」といった共通ワードを含んでいます。しかし、冒頭のあなたの反応では、自分の話をきちんと受け止めてもらったという満足感を相手が得ることは期待できません。

共感は同じ構造の話が作り出す

ところが最初の話に対して「そういえば、おれも先月遅刻して、先生にひどく怒られてしまったことがあるよ」と続けると、相手の受け止め方はまったく変わってきます。宿題の話と遅刻の話では話題が違うにもかかわらず、相手は自分の気持ちをしっかり理解してもらった気になるはずです。
なぜ、そう感じるのでしょうか。それは、お互いの話の基本的な構造が一致するからです。つまりどちらの話にも<何かミスをする>→<先生にしかられる>という構造が含まれています。主題そのものは片方が「宿題」、もう一方が「遅刻」と異なっているけれど、ともに「自分が怒られた」事実が共通点となるわけです。
人の話を聞いて共感を示すためには、同じことばを使った文章を続けるだけでは不十分なのです。大切なのは、言葉尻ではなく「構造」。相手の話の後に、同じ構造を持つ話をつないでいく。そうした形でお互いの共通性を確認するとき、二人の共感はとても深まるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 社会科教育部門 教授 串田 秀也 先生

大阪教育大学 教育学部 教員養成課程 社会科教育部門 教授 串田 秀也 先生

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メッセージ

会話分析とは、人間がふだん当たり前に行っているコミュニケーションの仕組みを研究する学問です。私自身が高校時代に、同級生たちとうまくしゃべれない時期がありました。そこから、人間が話す仕組みに興味を持つようになりました。誰でもうまく話がかみ合わない経験があると思いますが、会話分析を学ぶと、かみ合う会話もかみ合わない会話も根っこには共通の仕組みのあることがわかります。コミュニケーションが苦手かもと思っている人がいるなら、そうした仕組みを深く学んで自分を見つめ直してみませんか。

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本学は、我が国の先導的な教員養成大学として、教育の充実と文化の発展に貢献し、とりわけ教育界における有為な人材の育成をとおして、地域と世界の人々の福祉に寄与する大学であることを使命としています。この使命を達成するため、実践的な教職能力を養う優れた教員養成教育を推進し、豊かな教職能力を持って教育現場を担える学校教員を育成するとともに、学術と芸術の多様な専門分野で総合性の高い教育を推進し、高い専門的素養と幅広い教養をもって様々な職業分野を担える人材の育成をめざしています。