会話の構造を分析すると仲間意識のレベルが見えてくる
人の体験談を聞かされたときにどう反応するか
「昨日、数学の宿題を忘れていったらさ、先生にすごく怒られちゃってとんでもない目にあったよ」と相手が話を切り出したとしましょう。これに対して、あなたが「実はうちのオヤジが数学の先生をやっていてさ、宿題をやってこない生徒がいたら片っ端から廊下に立たせてるらしいよ」と切り返したらどうなるでしょうか。
相手はあまり気分がよくないはずです。「その話し方って、もしかしておれにケンカ売ってんの」と反応することはあったとしても、「お前ってやっぱりおれのこと、よくわかってくれてるよな(うれしいよ)」と喜んだりすることはまずないでしょう。話の内容としては確かに相手のことばである「数学の宿題」や「先生」といった共通ワードを含んでいます。しかし、冒頭のあなたの反応では、自分の話をきちんと受け止めてもらったという満足感を相手が得ることは期待できません。
共感は同じ構造の話が作り出す
ところが最初の話に対して「そういえば、おれも先月遅刻して、先生にひどく怒られてしまったことがあるよ」と続けると、相手の受け止め方はまったく変わってきます。宿題の話と遅刻の話では話題が違うにもかかわらず、相手は自分の気持ちをしっかり理解してもらった気になるはずです。
なぜ、そう感じるのでしょうか。それは、お互いの話の基本的な構造が一致するからです。つまりどちらの話にも<何かミスをする>→<先生にしかられる>という構造が含まれています。主題そのものは片方が「宿題」、もう一方が「遅刻」と異なっているけれど、ともに「自分が怒られた」事実が共通点となるわけです。
人の話を聞いて共感を示すためには、同じことばを使った文章を続けるだけでは不十分なのです。大切なのは、言葉尻ではなく「構造」。相手の話の後に、同じ構造を持つ話をつないでいく。そうした形でお互いの共通性を確認するとき、二人の共感はとても深まるのです。
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