奨学金を返せなくなる人とは? 奨学金とマクロ経済学との関係

奨学金がテーマに?
国や世界の経済全体の動きをとらえるマクロ経済学では、経済に影響を与えるさまざまなものとの関係を分析します。大学進学の際に利用される「貸与型奨学金」も研究対象の一つです。卒業後に返済するものですが、実際には返済困難に陥る人も珍しくありません。一方、経済学の通常の枠組みでは、お金を返せる見通しがない人はそもそもお金を借りないと考えられてきました。このように、従来の想定に当てはまらない貸与型奨学金のケースについて、どのように扱えば国の経済成長に貢献できるのでしょうか。
現在バイアスの影響
まずは原因を突き止めようと、返済困難になる人の特徴が分析されました。すると「現在バイアス」という心理状態が当てはまることがわかってきました。将来得られるだろう価値よりも、現在の楽しさを重要視してしまうのです。学生は大学時代に、将来は奨学金を返済できるくらいの収入を得ようと計画を立てているでしょう。就職してお金を稼ぐためには勉強も必要です。しかし現在バイアスが強いと、勉強をサボって遊びなどに時間をかけてしまい、収入の高い職に就けない傾向が見られます。
経済への影響は?
奨学金における現在バイアスは、日本の経済全体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。マクロ経済学の理論に当てはめた分析の結果、学生の現在バイアスが強いときほど、国は奨学金をはじめとする教育支援を充実させたほうがよいことがわかってきました。経済学では、就職したときの所得は大学での勉強量に関係すると考えられています。たくさん勉強した人ほど、収入の高い職に就ける可能性が上がるのです。教育支援を充実させて勉強したくなる状況を作り出した方が、将来的な国のGDP向上につながると期待できます。
一方で、現在バイアスが弱いと学生は追加支援がなくても勉強するため、教育以外に投資した方がGDPは改善します。どこにお金をかければ経済成長につながるかを判断する上で、現在バイアスの強さがヒントになるかもしれません。
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