ビッグデータを集めながら健康意識を高める一石二鳥の健康診断
住民千人が参加する健康診断
青森県弘前(ひろさき)市の岩木地区では、2005年から毎年、20歳以上の住民約千人が参加する無料健診が行われています。この健診には、遺伝子や腸内細菌など通常の健康診断や人間ドックでは検査しない項目がたくさん盛り込まれ、アンケートも含めると、約3千項目にもなります。青森県は全国でも平均寿命が短く、県民の小児肥満率や塩分摂取量など健康に関する指標についても、悪い数値が出ています。そこで、住民の健康意識を高めてもらい、「短命県」の汚名を返上しようと始まったのがこの健診です。教育委員会とも連携して、地域の学校で健康に関する講義を行うプロジェクトも推進中で、子どもの時から自分の健康に対する意識を高めてもらおうという試みです。
もう一つの目的はビッグデータの収集
この健診のもう一つの目的は、医療ビッグデータの収集です。数多くの項目を調べることで、生活習慣や体力と健康状態の関連をより細かく研究するためのデータが収集できます。そのため、例えば消化器内科であれば腸内細菌と消化器疾患というようなありふれた研究になりますが、この健診で得られたビッグデータを解析すれば、腸内細菌と婦人科疾患あるいは泌尿器疾患などとの関連を調べることができるため、これまで知られていない病気と要因との関連が明らかになる可能性があります。
研究や商品開発に健診結果データを利用
この健診には、大学の複数の診療科や食品メーカー、健康関連企業が参画しており、このデータを研究や商品開発に利用しています。例えば、ある大手企業は、開発した「野菜の摂取量を調べる機械」の性能を検証するため、この健診の血液検査でカロテノイド量を調べて機械のデータと照らし合わせる研究を行って性能を評価しました。この健診を今後も継続してデータが蓄積されていけば、若い時と高齢になったときの健康状態を比較するなど、継続的な研究も行えるようになると期待されています。
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弘前大学 医学部 医学科 教授 三上 達也 先生
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