二酸化炭素の増加に適応する作物を育成するには?
増加傾向にある二酸化炭素
大気中の二酸化炭素の増加は、地球温暖化の大きな原因の一つとされています。最近の調査では、二酸化炭素の平均的な濃度は400ppmを超えており、今後もさらに増加していくことが予想されています。パリ協定をはじめ、二酸化炭素の排出量抑制のための取り組みは世界各国で行われていますが、それでも大気中の二酸化炭素の量を減少に転じさせるのは、なかなか難しいと考えられています。
二酸化炭素の増加をプラスにできる作物
一方、植物の側から考えてみると、大気中の二酸化炭素の増加は、光合成にプラスに作用し、成長を促進させる要因にもなり得ます。このプラス効果をうまく活用すると、米や小麦などの主要作物の収穫量を増加させることも可能になると考えられます。稲の場合、二酸化炭素濃度の増加によって収穫量が増えやすい品種と、そこまで変化がない品種とに大きく分かれます。どちらの品種も、二酸化炭素を取り込む速度にはそれほど差がありません。光合成によって得た炭水化物を、前者は葉などで新しい器官を作るために投入する傾向があり、後者は茎や根にため込む傾向があります。前者のように、環境の変化に積極的に対応していく能力のことを「表現型可塑性」といいます。
二酸化炭素の増加に積極的に対応して収穫量を増やせる作物を開発するには、遺伝子情報を分析して、どの遺伝子領域に必要な能力についての情報が含まれているのかを検証していく必要があり、さまざまな作物に対する研究が世界各地で進められています。
食糧の安定供給を支えるために
現在の農業で育成されている主要作物は、今後、10年から20年の間に品種改良を施していかないと、地球の環境の変化に対応できなくなるかもしれないと考えられています。世界で人口の増加傾向が続く中、穀物をはじめとする食糧の安定供給は、重要な課題の一つです。地道な品種改良の研究が、これからの世界を支える存在になり得るのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 植物生命科学科(令和7年度から農学部 食料農学科 農学コース所属) 教授 下野 裕之 先生
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