高齢者福祉のカギを握る「地域包括ケア」とは?

高齢者福祉のカギを握る「地域包括ケア」とは?

「介護保険」が生み出したもの

高齢者支援はソーシャルワーカーやケアマネジャーといった専門職が行うものと考えられ、その質を高め、数を増やすことに焦点が当てられてきました。しかし2000年に「介護保険」が導入され、そのコストがかさむことを理由に、近年は要介護度の低い高齢者へのサービスは地域に委ねられる傾向がみられます。認知症や日常生活に支障がある独り暮らしの高齢者、同じく高齢の配偶者が高齢者の介護をしている「老老介護」の世帯もあります。地域で孤立しがちなそうした人々への支援をどうするかが、高齢者福祉の新たな課題となっています。

地域ぐるみで高齢者を支援する

そこで考えられたのが、専門職だけでなく近隣住民も連携することで高齢者をサポートする「地域包括ケア」という概念です。いわゆる「見守りネットワーク」の形成や誰もが気軽に立ち寄れるコミュニティカフェづくりなどが好例です。住宅、介護、医療、福祉、予防、生活の支援が切れ目なく提供されるシステムを意味する地域包括ケアは、高齢者および専門職だけでなく、地域住民が連携しながら多世代で共生のまちづくりをする役割を担うという側面ももっています。介護分野の人手不足が問題となっている今の日本では、限られた人材を有効活用することが必要です。

若者への期待は高い!

大学もまた地域包括ケアの担い手として注目されており、コミュニティカフェの運営や団地で高齢者の日用品の買い出しといった支援を行っているところもあります。高齢者福祉やまちづくりに求められるのは、革新的な支援方法です。例えば、介護施設では食事や飲酒などの面で制限が多く、入所者は息抜きや娯楽へのニーズを抱えています。行政や施設が基本的な生活外の部分で支援するのは難しいところがあるのですが、学生の自由な発想ならばそこを乗り越えられる可能性があります。また「世代間交流」がまちづくりの重要な要素となっている点からも、若者への期待はとても高いのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室 教授 和気 純子 先生

東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室 教授 和気 純子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会福祉学

メッセージ

「死」を身近な存在ととらえている高齢者は、残りの人生の過ごし方を真剣に考えます。その人生の集大成に共に向かい合い、学び合い、支援することは非常にやりがいがある仕事です。
「高齢者福祉」というと、高齢者介護のイメージが強いかもしれませんが、福祉の基盤となる制度や支え合いの仕組み、支援のためのスキルを考えるのが高齢者福祉です。ひいてはまちづくりや社会全体をどのようにつくるかにつながるものであり、自分の視野を広げ、成長させてくれる分野だと言えるでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。