新しい時代の林業の研究 生産性を上げ環境を守る木材生産とは

新しい時代の林業の研究 生産性を上げ環境を守る木材生産とは

次世代の林業へ

日本の森林面積は国土の2/3に当たり、世界有数の森林国です。その日本の林業について、最近では生態系サービスなど環境への影響の配慮や、頻発する土砂崩れの防止策、木質バイオマスの需要増加など、新しい課題も生まれています。こうした課題を解決して次世代の林業を発展させ、将来にわたって自然の恵みを活用するために、さまざまな研究が行われています。

生産性アップや土砂崩れ防止

林業は産業なので、その生産性を上げるための研究は重要です。森林から木材を切り出す機械が搬入できるか、伐採した木材を林道まで運び出すのにどのくらいの時間がかかるか、市場や向上までの運搬距離がどれくらいかによって、せっかく収穫しても採算が取れない場合があります。研究によって、どれくらいの森林が経済的に利用可能なのか、ということがわかってきつつあります。
この基準で山林を調査すると、整備すべき林道の位置や、製品となりうる実質的な資源量などが把握でき、行政の林業施策などの基礎となります。採算が取れない場所は、林業用のスギ・ヒノキではなく広葉樹を植林するなど、山林の活用計画も変わります。さらに、林業に使う複数の機械をどう組み合わせると効率よく収穫できるかといった研究が、作業時間やコストの見積もりの正確性につながり、林業経営に貢献しています。
また、土砂崩れや濁り水の防止に関する研究も進んでいます。ドローンで撮影した地形データをもとに、どこに水が集まるかを解析し、崩れやすい場所を特定して対策の強化の必要性を検討しています。

ノウハウをもとに木質バイオマス生産

最近ではバイオマス発電が盛んになり、木質バイオマスの需要が高まってきました。森林の樹木を間引いた際に出る間伐材などを活用するのが主流ですが、それだけでは足りない状況になってきています。そこで、こうした林業のノウハウを生かして、キリやヤナギといった成長が早い樹木を木質バイオマス燃料としても用いるような研究も始まっています。

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先生情報 / 大学情報

宮崎大学 農学部 農学科 森林環境持続性科学コース 准教授 櫻井 倫 先生

宮崎大学農学部 農学科 森林環境持続性科学コース 准教授櫻井 倫 先生

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森林利用学、森林科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「農学部」というと、農作物の品種改良や栽培方法の研究をしているイメージがあると思いますが、本学の農学部では、生態系や森林、林業、畜産、漁業、獣医学など第一次産業全般に関わることを網羅しています。また、経営学、政策などの文系に属する学問、林道や農道の整備、用水の設計、防災など工学、作業用機械や収穫時期を見極めるセンサなど機械や情報技術、バイオテクノロジーのような化学など、幅広い学びがあります。逆に言えば、工学や経営学など、農学以外の興味を持つ人にとっても、面白く感じてもらえると考えています。

先生への質問

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宮崎大学に関心を持ったあなたは

宮崎大学は、「世界を視野に、地域から始めよう」のスローガンのもと、人的・知的・物的資源を共有し、機能を相補します。(1) 教養教育の一層の充実と質的向上、(2) 教育・研究基盤の強化、(3) 学際領域の教育・研究の強化と創出、(4) 地域および国際社会への貢献、を具体的な目標として、21世紀を展望しつつ、知の創造の殿堂として、活気に溢れ、魅力に満ちた学風と輝くキャンパスを築きます。また、地域と連携して宮崎の文化と風格を高めることを目指しています。