通信の安全性と高速化を両立するネットワーク最適化技術

通信の安全性と高速化を両立するネットワーク最適化技術

パケットという「小包」が通る関所

インターネットを使うとき、データはパケットと呼ばれる「小さな荷物」に分けられて送られます。このパケットはファイアウォールという「関所」を通過しなければなりません。ファイアウォールは、危険なパケットを見分けて通さないようにする重要なセキュリティ装置です。「この種類のパケットは通さない」といったルールが設定されており、届いたパケットを一つ一つ照合して安全性を判断します。ファイアウォールはネットワークの入口で私たちのデータを守る警備員のような存在です。ただしルールは上から順に確認されるため、よく使うルールが下のほうにあると、処理に時間がかかり、通信の速度が落ちる原因になります。

セキュリティと速度のジレンマ

通信の安全性を高めるには、パケットをより厳密にチェックする必要がありますが、それによって処理に時間がかかり、通信速度が遅くなるというジレンマが生じます。例えば、リモート手術のように高精度でリアルタイムな通信が求められる場面では、ほんのわずかな遅延でも命に関わる可能性があります。外科医の動きが患者側のロボットアームに遅れなく伝わることが重要なのです。また、自動運転車やスマート家電など、インターネットにつながるモノが増える現代では、安全かつ高速な通信の両立がますます重要になっています。

ソフトウエアで最適化する未来

通信を高速化するために専用チップを使う方法もありますが、コストが高くなります。そこで注目されているのが、ソフトウエアによる最適化です。例えば使用頻度の高いルールをリストの上位に移すことで、パケットの分類を効率よく行い、安全性を保ちつつ通信速度を向上させることができます。これはちょうど、よく使う道具を手の届きやすい場所に置き直すようなものです。この技術は自動運転車やスマート家電のように、スペースやコストに制約のある機器にも導入できるため、将来のネットワーク社会を支える大きな力になると期待されています。

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前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 助教 渕野 敬 先生

前橋工科大学工学部 情報・生命工学群 助教渕野 敬 先生

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情報工学、情報科学、通信システム工学

メッセージ

例えば、自転車の駐輪場が満車のとき、事前に知っていたらバスで来たのに、と思うことがあるでしょう。そんな日常の「不便」に気づく想像力が、未来を変えるきっかけになります。自身の周りの不便を見つけて、それを解決するために何が必要かを考えてみてください。その思いが学びの原動力となり、新しい技術を生み出すヒントになるはずです。ゼロからイチを作り出す力は、これからの時代にますます求められます。身近な疑問から始まる発想が、明日の世界を変えるかもしれません。

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