灰色の街からみどりの街へ ガーデンデザインと街づくりを考える
都市と庭園
街づくりの分野では、都市の中に庭園をつくり演出する「ガーデンデザイン」を取り入れることが世界的なトレンドになっています。先進的な事例がシンガポールで、「City in the garden」という国家戦略のもと、都心・郊外を含めて国中で緑化・庭園化が進められており、世界の人々の憧れの対象になっています。また、規模は違いますが、ニューヨークや東京においても同様の思想にもとづいた街づくりが行われています。経済成長期を終えてより成熟していく社会では、コンクリートで覆われた「灰色の空間」よりも、人が快適に暮らせる「みどりの街づくり」により大きな価値が見いだされているのです。
ガーデンデザインの視点
庭園には古代エジプトから続く四千年以上の歴史があります。中世にはフランスやイギリスで「整形式庭園」「風景式庭園」が確立し、日本でも「坪庭」や「借景」といった独自の庭園文化が花開きます。こうしたガーデンデザインの要素を取り入れた街づくりでは、例えば最初に植えられる苗木は、10~20年後に大樹となって空間を彩るため、時間軸をも見据えた設計思想が求められます。また周辺の自然環境との調和や、地域課題の解決など、地域・関係者と連携・協調していく姿勢も求められます。
神戸市を事例として
ガーデンデザインと街づくりを考える上で、最適といえる都市が兵庫県神戸市です。神戸では北を向けば六甲山の山並みが、南を向けば穏やかな瀬戸内の海が視界に入ります。海と山に挟まれた狭いエリアに大都市機能が存在する事例は世界的にもほとんど見られません。こうした特殊な空間で街づくりを考えると、いかに周辺の自然を街や建物に取り入れて共存するかといった視点が否応なくもたらされます。また日本有数の歴史を誇る「東遊園地」のリニューアルや、三宮駅前を起点とする歩道の拡張など、ガーデンデザインに通じる再開発も多数行われています。都市機能と緑が共存する空間づくりを考える上で多くの気付きを与えてくれるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸芸術工科大学 芸術工学部 建築・環境デザイン学科 教授 長濱 伸貴 先生
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