より良い英語教育を実現するために
文化の違いが英語教育のネックに
一般的に、日本人は誰かと会話するときに自分だけが話すのではなく、他人にも話す機会を与えようとします。一方で西洋圏では、会話中は常に自分が発言するタイミングを計り、そのときがきたら他人を気にせず話しはじめます。また、「あなたはどちらの出身ですか?」と聞かれたとき、日本人は「私は〇〇の出身です」とだけ答えますが、西洋圏ではそのあとに「〇〇はどういう土地で、ここにきた理由は~」と話を続けます。こうした違いは文化の違いから生じるものですが、日本人が外国人教師から英語を学ぶ場面では大きなネックになります。
動画で会話を記録してみると
ある研究では、日本人と西洋からきた学生を教室に集めて、学生同士で会話する様子を動画に記録しました。その後、学生に動画を見返してもらい、「話したい」と思っていたタイミングでPCの「+」ボタンを、「話したくない」と思っていたタイミングで「-」ボタンを押させて記録しました。更にそのときどきの心境についても調査しました。その結果を分析して見ると、日本人は他の人が話す順番を気にしながら話していたこと、西洋の学生は積極的に発言するチャンスを得ようと考えていたことが客観的に明らかになりました。
実際のコミュニケーションスキルを伸ばす
この研究で最も重要なポイントの1つは、実際のコミュニケーションスキルを伸ばすことができる教室活動を開発することです。例えば、多くの教室での実践では、日本人は相手を待ってから話したり、"How about you?"と言って他の人に話す順番を渡したりします。実際の会話ではこのような行動は起こりませんので、こうした教室でのやり方に慣れた日本人は、英語の会話や会議に参加できないことに戸惑うのです。
この研究は、積極的に会話に参加すること、明確な情報を加えること、速いテンポの会話で発言権を確保することを練習する教室活動を開発するのに役立ちます。今後のより良い英語教育をつくっていくうえで大きな役割を果たすでしょう。
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先生情報 / 大学情報
宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 言語・文化専攻 教授 ネイサン ダッカー 先生
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