ニワトリを健康に! 腸内細菌を整えるあの手この手

ニワトリを健康に! 腸内細菌を整えるあの手この手

腸を制する者は健康を制する

安全でおいしい卵や鶏肉をつくるには、健康なニワトリの飼育が必要です。人の「腸活」が推奨されているように、ニワトリも腸内細菌を良好な状態に保つことで健康によい影響があります。鶏卵・鶏肉の生産でも、ニワトリの腸と健康の関係が注目されています。
最近では、ニワトリの腸内細菌の状態は、免疫やホルモンバランス、肝機能など、全身の臓器の機能に関わっていることがわかってきました。そこで、有用細菌を与える「プロバイオティクス」でニワトリを健康に育てて、安全で質の良い鶏肉、鶏卵を生産することがすでに始まっています。

ヒヨコの健康は有用細菌から

ニワトリに乳酸菌などの有用細菌を食べさせることは、生産現場でもすでに常識になっています。しかし現在研究されているのは、その常識を破り、卵のときから有用細菌が含まれるようにする方法です。
鳥類は卵をつくる卵管と肛門が同じ穴につながっていることから、ふんからの腸内細菌が卵の中に入り込みやすくなっています。悪い菌が卵に入るとヒヨコが育たず、良い細菌が入り込めば、生まれつき強いヒヨコが生まれて生産量も上がります。そのため研究では、親鳥からもらう菌、卵管で入り込む菌、ふ卵器で入り込む菌などの種類を調べて、有用細菌を適切にヒヨコに受け継がせる方法を確立しようとしています。

鳥には鳥の乳酸菌

ほかにも、さまざまな角度からニワトリの腸活が研究されています。例えば、ヒヨコが育つ過程で獲得する免疫を促す細菌や、ニワトリ独自の有用な腸内細菌を探したり、加齢に伴ってどのように腸内細菌の状態が変わっていくかを調べたりしています。また、人間は「苦み」で腸の免疫機能が影響を受けますが、食べたものを一時的にためておくニワトリの器官「そのう」にも味の受容体があるため、同じ効果があるのではないかという仮説のもと、実験が行われています。
こうしたニワトリの腸活の研究で、いずれは「親子丼」がますますおいしくなるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 新居 隆浩 先生

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 新居 隆浩 先生

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動物生命科学、動物生産科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

社会に出ると、「好きだからやっている」だけでは周囲を説得できないことや、社会にどう貢献するかの説明を求められることがあります。でも、「好き」という気持ちは原動力として持ち続けてほしいです。私は小さな頃からとにかく鳥が好きで、鳥の獣医師になりたかったのですが、それがかなわずに畜産の道に進みました。最初こそ残念に思いましたが、「獣医師は一対一で鳥を健康にするが、研究者なら世界中の鳥を健康にできる!」と気づいてから畜産の勉強が楽しくなりました。「好き」があれば、途中で挫折があっても道は開けるはずです。

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