お医者さんが処方したアプリで病気を治療

お医者さんが処方したアプリで病気を治療

「アプリを出しておきますね、お大事に」

スマホなどのデジタルデバイスやインターネット通信の性能は、日々進化しています。その技術はオンライン診療、遠隔手術など医療分野にも応用されており、「デジタル医療」と呼ばれています。中でも、最近注目を集めているのが「デジタル療法」です。これは薬を処方する内科的治療、手術などの外科的治療に続く、デジタル技術を用いた第三の治療として期待されています。例えば、喫煙やアルコールといった薬物依存、あるいは高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、患者自身が習慣を変えることが重要ですが、それを習慣の修正を手助けするのがデジタル療法です。デジタル療法の中でもスマホアプリを用いた「治療用アプリ」として、禁煙治療アプリ、あるいは高血圧治療補助アプリが日本でも薬事承認を得ています。医師から「アプリを出しておきますね」と言われる時代になったのです。

毎日使うスマホがアドバイス

例えば通常の生活習慣病の治療では、月1回程度の頻度で医療機関を受診し、通常の診察や検査の説明、処方などを行って、10分前後の診察時間です。この際、食生活や運動のアドバイスなど、生活習慣の修正に関する話もできればいいのですが、多くの患者がいる外来では、話をする時間が不十分になりがちです。そこで、多くの人が毎日使うスマホが有効になります。スマホに医師から処方された治療用アプリを入れて、医師や看護師の代わりとなるキャラクターとテキストで会話しながら、知識やアドバイス、励ましを24時間体制で伝えてもらい、生活習慣の修正意欲と効果を維持するのです。これには「認知行動療法」といった心理学的な手法も参考にされています。

まだまだ進化するデジタル医療

現在、日本で薬事承認がされているのは禁煙と高血圧に関する治療用アプリですが、スマホアプリ以外にも、ヘッドマウントディスプレイをつかったバーチャルリアリティでうつ病や不安症、痛みなども治療する研究も進んでおり、これからデジタル療法の可能性はますます広がると期待されています。

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金沢大学 融合学域 スマート創成科学類 教授 野村 章洋 先生

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医学、情報工学

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メッセージ

これからの先行きが不確かな時代において、何かひとつでも「突き抜けている」分野があることが大事になってくるかもしれません。学校の勉強やスポーツだけでなく、ゲームがめちゃくちゃ好きだとか、この推しの知識は誰にも負けないとかでも良いのです。自分のとがったところはとことん伸ばし、そのとがりこそが世の中を変えうる原動力になります。また自分が今の社会に違和感を感じているなら、なぜそう思うのかをぜひ突き詰めてください。違和感の自覚は新たなイノベーションの種であり、その違和感を共に解決していきましょう。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。