数学でさまざまなコトを解析して社会に役立てる~凸解析と最適化~
凹んでいない形の分析「凸解析」とは
モノには、凹みがあるものとないものがあります。例えば生卵に凹みはありませんが、リンゴやみかん、ドーナツには凹みがあります。凹みがない形のモノを数学用語では「凸集合」と言い、これを分析することを「凸解析」と言います。高校数学でも、「上に凸」「下に凸」という言葉を通じて、凸解析に触れています。
凸解析においては、「双対性(そうついせい)」と呼ばれる性質が多く発見されています。例えば下に凸な関数には、ペアとなる下に凸な関数があって、これらは表裏一体の関係になっています。
数学で社会的課題を解決する
個人や組織が一番良い状態を見つけるために、「最適化」を行います。例えば運送会社による配送計画や、飛行機の運航スケジュールなどは、どのようにするかで総価格が変わります。このような状況を数学的に記述したものが最適化問題であり、これを解くことでさまざまな課題を解決できます。ある航空会社では、年間1千万ドルの経費を削減しました。このような最適化問題にも双対性があります。下に凸な関数を用いて記述された最適化問題には、ペアとなる最適化問題が存在しています。表と裏が並列して存在するのです。
また、最適化は1個人や1企業の行動ですが、2人以上が同時に行動したときには複雑になる場合があります。この状況の研究は「ゲーム理論」と呼ばれます。例えば、少子高齢化は、市民と行政のゲーム理論で説明することができます。このように解決が難しいような課題でも、数学を使って状況を分析し、的確な対応を行えば、十分な効果が得られると考えられています。
新しい枠組み「集合値最適化」への挑戦
人のステータスは数値で表されます。すなわち、すべての人はグラフ上の点として表現できます。点が集まると、クラスや組織などの集団となります。そこで、集団同士の比較を定式化し、最も良い集合を見つけるための新しい枠組みが「集合値最適化」です。この枠組みを活用し、より良い集団を作るためのヒントを得る研究も進んでいます。
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先生情報 / 大学情報
島根大学 総合理工学部 数理科学科 教授 黒岩 大史 先生
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