講義No.13783 教育 社会学

「変わるべき」は生徒ではなく…… 教育社会学が投げかける視点

「変わるべき」は生徒ではなく…… 教育社会学が投げかける視点

あるべき生徒

私たちは教育について語るとき、「教育とはこうあるべきだ」という理想論になる傾向があります。あるべき教育を追求することは「より良い教育」につながる面はありますが、そうした考え方は「あるべき生徒」という規範をつくり出す面もあります。例えば毎日学校に登校して、下校するまでクラス全員で同じ授業を聞き続けられる生徒は「規範的」とされます。一方授業中に立ち歩く生徒や登校しない日が多い生徒は、学校の規範から外れた異質な存在とされて「問題児」や「不登校」といったレッテルを貼られてしまいます。

発達障害を『支援』する前に考えること

生徒が学校の規範から逸脱しているとみなされる要因の一つとして「発達障害」があります。「発達障害がある」とされる生徒もほかの生徒と同様に給食を食べたり、校庭で遊んだりします。そのような場合、その生徒の「発達障害」が着目されることはありません。しかしほかの生徒と同じように授業が受けられないような場面になると、途端にその生徒の「発達障害」がクローズアップされます。多くの学校関係者は、そうした生徒がほかの生徒と同じような学校生活を送れるように支援をします。しかし、そもそも朝から下校時間まで、45分の授業を何コマもじっと座って聞き続けられない生徒を「異質」とみなし、「支援」の対象とする視点は正しいのでしょうか。

制度が障害をつくり出す

「発達障害」が学校運営のあり方にそぐわない場合にのみ問題視されるのであれば、障害は学校という制度がつくり出しているという解釈もできます。「発達障害」をはじめ、さまざまな理由で学校生活になじめずに授業についていけない生徒は、そうした状況に対して「生きづらさ」を抱えている上に、さらにそんな自分を「変える」ように働きかけられています。しかし変わるべきは苦しい立場にある生徒だけではありません。発達の度合いや考え方、特性が異なる生徒が等しく学べる学校づくりをめざすのであれば、既存の学校制度のあり方、授業のあり方を見直すような視点が不可欠なのです。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 教育学部 教育学科 教授 鶴田 真紀 先生

創価大学 教育学部 教育学科 教授 鶴田 真紀 先生

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教育社会学

メッセージ

教育の分野では、子どもが成長して変化していくことを「美しい物語」として捉える傾向があります。しかしそこで尊ばれる成長や変化は、「子どもはこうあるべき」という社会がつくりだした規範にのっとったものです。こうした押し付けへの違和感を含めて、学校生活が難しい、学校に居場所がないと感じたことがあるなら、私が専門とする教育社会学をお勧めしたいです。そのモヤモヤがどこからきているのかを考えて、そこに「言葉を与える」学びを通して、あなたを悩ませる生きづらさの正体を確かめてみませんか?

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。