教師の意識と生活は好転している? アイデンティティの重要性
教師は仕事を肯定的にとらえるようになった?
2004年と2014年に、小・中学校教師を対象にアンケート調査が行われました。教職生活についての意識などを回答してもらう内容です。すると2014年のほうが、仕事にやりがいや生きがいを感じる人の割合が高くなりました。教師を取り巻く環境は年々過酷になっているにもかかわらず、仕事を肯定的にとらえる人は増えたのです。
求められる成果の変化
アンケートの結果を分析すると、「この仕事にはやりがいがあるはずだ」と信じて、日々の教職生活に向き合っている教師もいるとわかります。また「高度な専門性を持ち、自分で工夫しながら自律的に教育をつくる仕事だ」、などのアイデンティティも教師の心を支えていました。
その一方で「決められた仕事をして成果を出さなければいけない」という認識も強まっていました。教師は子どもが人として成長したなど、点数では計ることのできない能力を伸ばそうとしています。しかし2007年に全国学力・学習状況調査が導入され、点数化された学力が成果として厳しく問われるようになりました。それにより、「規定通りの授業をしてテストの点を上げさせる」など、本来の専門性とは別の側面が強く意識されるようになり、教師のアイデンティティがより不安定なものになりました。
教師を支えるアイデンティティ
教師が肯定的に仕事に向き合ううえで、アイデンティティの重要性が増しています。アイデンティティを育む手法として、教師教育では省察(せいさつ)が注目されています。自らの体験をそのときの感情や思考、自分が大事にしている価値をもとに分析することです。例えば教育実習後、本当はどうしたかったのか、何が原因で思い通りにいかなかったのかなどを自分なりに振り返り、改善の道筋を考えます。これをくり返すうちに自分は自律した存在だと思えるようになり、教師としてのアイデンティティが育まれるのです。このように教師の実情を把握し効果的な教師教育などを提案する研究は、教育現場を支えるために重要なのです。
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弘前大学 教育学部 学校教育講座 教授 福島 裕敏 先生
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