失明から人々を守る 眼科治療の最前線

網膜の病気とその治療法
「網膜」は、目の奥にある光を感じ取る膜で、デジタルカメラでいえばイメージセンサの役割を果たします。この網膜に異常が起こると、視力が急激に低下して、放置すれば失明してしまうこともあります。代表的な病気は、網膜が剥がれてしまう「網膜剥離」です。この病気は、飛蚊症(目の前に虫が飛んでいるように見える症状)で始まり、放置すれば失明につながる緊急性の高い病気です。治療には「硝子体手術」という特殊な手術を行います。目の中のゼリー状の硝子体を取り除き、特殊なガスを入れて網膜を元の位置に戻すのです。この手術は非常に精密で、長年の経験と高度な技術が求められます。
糖尿病が引き起こす目の病気
「重症糖尿病網膜症」も硝子体手術を必要とする病気です。糖尿病が長引くと、細かい血管が多い網膜にも影響が出てきます。糖尿病のコントロールが悪い期間が長いと網膜の毛細血管が詰まって網膜が血流不足となります。すると網膜が「血流が足りない」というサインを出し、それによって不完全な新生血管が生じます。放置すれば新生血管とともに増殖膜が出現し、最終的に網膜剥離や緑内障で失明につながります。青森県は、若い年齢でも重症の糖尿病網膜症患者が多いため、失明予防が大きな課題となっています。
最適な治療タイミングを探る
手術をする前に、眼の状態を適切に評価し、必要な処置を適切にすることが手術の成功につながります。例えば血管新生を抑制する薬剤を事前に注射したり、レーザー治療で異常血管の成長を抑えたりした後に手術を行い、少しでも網膜が落ち着いた状態で手術をした方がよいことが臨床研究からわかってます。これは「火のついたところに油を注ぐことにならないように、まず火を消してから手術する」というイメージです。手術をする際に、さまざまなデータをとり、よりよい手術結果を得るために何をすべきかを検討することは、大学病院で勤務する眼科医の重要な役割です。
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