謎がいっぱいの英語は、どのようにしてできあがったか?
昔の英語はもっと複雑だった!
英語は、最初から1つの言語だったわけではありません。450年頃、イギリスのブリテン島に渡ってきたゲルマン系のアングル人・サクソン人・ジュート人という3つの部族が使っていた言葉が合わさってできたものです。その後、11世紀に「ノルマン征服」があり、フランス語やラテン語が入ってきて、今日のような言語になりました。
英語の授業で、三人称・単数・現在形の動詞にはsをつける「三単現のs」という文法を習ったと思いますが、かつての英語は一人称・二人称・三人称×単数・複数×現在形・過去形によって、それぞれに動詞が変化するもっと複雑な文法でした。それが時代を経て、使いやすい単純なものに変化したのです。
不規則な英語はなぜできた?
英語には発音とつづりが一致しない単語が実に多くあります。例えば、debtは「デット」と発音し、bは発音しません。これは昔ほぼ同じ発音でdetteとつづったのですが、ある時代にこの単語の語源であるラテン語のマネをしようという運動が起こり、強引に発音しないbを入れてしまったという過去があるのです。
さらに英語の助動詞の中でmustだけは過去形がありません。実はmustは昔motanという動詞の過去形mosteに由来しています。つまり、もともと過去形の動詞なのでさらに過去形にすることはできないのです。きちんと規則があるように思える英語も、よく見ると「なぜ?」と思う不規則なものがたくさんあることがわかります。
「なぜ」を考えると、より理解できる
このように英語は世の中の動きを反映してできあがっています。昔や現在の英語がどういう特徴を持っているのか、昔はどういう語順のパターンが多かったのか、歴史の流れの中でどう変化してきたかなどを分析し、結論を導き出すのが「英語学」「英語史」の面白さです。単語や文法をただ暗記するだけではなく、「なぜそうなるのだろう」という疑問を持つと、英語がどういう言語なのかをより深く知るきっかけになります。
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中京大学 国際学部 言語文化学科 准教授 松元 洋介 先生
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