運動が引き起こす代謝の変化で、効率的に健康になれるのか?
体脂肪は敵か味方か
肥満でカギとなるものの一つが、体脂肪です。よくダイエットの広告で「体脂肪を減らす」とうたわれますが、体脂肪には、人体のエネルギーの貯蔵場所としての大切な役割があります。さらに最近の研究ではアディポカインといって、体脂肪から体の機能に影響を及ぼす物質が分泌されていることがわかってきました。アディポカインには非常に多くの種類があり、それらのなかには病気を引き起こすものもあれば、抑えるものもあります。病気を予防するためにそれらの分泌を調節させたいところですが、はたして運動でそれらの分泌が変わるのでしょうか。もしそうなら、効果的に分泌を促進・抑制できる運動があるのでしょうか。さまざまな仮説をもとに、現在研究が進められています。
なぜ肥満は悪いのか
そもそも、なぜ肥満はいけないのでしょうか。人は太ると、さまざまな病気との合併症を引き起こしやすくなり、したがって死亡率も上がるからです。そんな肥満解消の基本は、食事と運動です。そこで難しいのが、継続です。腹筋や腕立て伏せを何回やっても、すぐに目に見える効果は出ません。すると、人はやる気をなくしがちです。しかし運動後の体内を生理学的にみると、人が持つ調整力が働いて、ダイナミックな代謝が行われているのです。その様子が可視化され、あとどれだけ運動を続ければさらにこれだけ改善が見込める、という具合に予測値まで表示できれば、目標に向かってモチベーションも高まるでしょう。将来、体内の変化が測れる生体指標ができれば、より積極的に運動に取り組む人が出てくるはずです。
医療にかかる前にできること
病気は医師が治療します。しかし病気になれば、本人も、まわりの家族も大変です。そうなる前に、疾病予防や健康増進を行うこと、そして病気の原因を取り除き、リスク低減に貢献することが大切です。つまり一次予防によって元気な人を増やすことが、これからの少子高齢社会で求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
鹿屋体育大学 体育学部 准教授 沼尾 成晴 先生
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運動生理学、運動代謝学先生が目指すSDGs
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