糖尿病治療の鍵を握るか? 筋肉にある感覚神経のはたらき

糖尿病治療の鍵を握るか? 筋肉にある感覚神経のはたらき

運動中の血圧調節にかかわる「筋肉の感覚神経」

運動をしているとき、筋肉へたくさんの酸素や栄養素を送る必要があるため、一時的に血圧があがります。これは筋肉への血流をあげて、酸素などを効率よく送るために、私たちのからだに備わっている重要な反応です。運動中に血圧をあげる役割を担っているのが筋肉にある感覚神経です。筋肉の感覚神経には、"筋肉が動いている(運動している)"ことを認識して、その情報を脳へ伝えるといったユニークなはたらきがあります。このはたらきによって、交感神経が活発化して血圧があがります。この一連のしくみを「運動昇圧反射(Exercise Presser Reflex: EPR)」といいます。

筋肉の動きを細かくキャッチ!

では、感覚神経はどのようにして"筋肉が動いている"ことを認識するのでしょうか。筋肉にある感覚神経には、代謝産物を認識する代謝受容チャネル(TRPV1など)や動きを認識する機械受容チャネルが存在します。代謝受容チャネルは、運動をすると増える代謝産物(水素イオンなど)を感知しているといわれています。一方、機械受容チャネルについては、発見されたばかりで、まだわかっていないことも多いですが、運動をしているときの筋肉の物理的な変化や力を感知しているといわれています。これらのチャネルが、"筋肉が動いている"ことを感知して、脳へその情報を伝達しているのです。

より効果的な糖尿病治療をめざす

糖尿病の改善には運動が効果的といわれています。しかし糖尿病の患者さんは、運動中に血圧が大幅にあがります。急激な血圧上昇は心筋梗塞など心血管系の病気を起こすリスクがあるため注意が必要です。そんな中、この血圧応答の異常に、筋肉にある感覚神経の代謝受容チャネルや機械受容チャネルが関係していることが発見されました。現在、運動効果を最大限に活かした糖尿病治療をめざして、これらのチャネルが関係する原因や抑制する方法について、栄養素や運動に着目した研究が進められています。

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鹿屋体育大学 体育学部 スポーツ生命科学系 講師 石澤 里枝 先生

鹿屋体育大学 体育学部 スポーツ生命科学系 講師 石澤 里枝 先生

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運動生理学、生理学、運動栄養学

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大学は一つの学問を徹底的に深く究めることのできる場です。大学にはその道のプロフェッショナルの先生がいて、自分のやりたいことをとことん追求できる環境が整っています。何が好きで、何に夢中になれるかを考えながら大学を選ぶと良いでしょう。すぐに夢や目標は見つからないかもしれませんが、若い頃の経験(失敗も成功も)は大きな財産になりますので、失敗を恐れずに、海外にも視野を拡げて、チャレンジしてください。そして、周りの人との関わりも大切にしながら、助け合いながら、豊かな人生を進んでほしいと願っています。

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鹿屋体育大学は、国立唯一の体育大学として、我が国のスポーツや武道、及び体育・健康づくりについての、教育と研究を発展させる使命をもった大学であり、その成果をもとに「実践的かつ創造的で、国際性、市民性を備えた、スポーツや武道のリーダー的人材の養成」を目的としている大学です。また、学ぶべき学問領域の基盤としてスポーツ人文応用社会科学系、スポーツ武道実践科学系、スポーツ生命科学系の3領域からなる、多様な教員組織を構成することで、スポーツや武道、及び体育、健康づくりに関する教育と研究の充実を図っています。