ローマの遺跡に倣え! 人間の暮らしを支える土木工学
ローマの遺跡に倣う
土木工学は、街づくりの学問です。ビル、橋、道路など、人々が安全安心に暮らすための基盤を、より頑丈に、より快適にするために、さまざまな角度から研究されてきました。
例えば、より「長持ちする材料」の研究があります。2000年以上残っているローマの遺跡の多くは、ベスビオ火山の「火山性微粉末」を使ったコンクリートでできており、その耐久性が知られています。それを現代に生かしたのが、九州のシラス台地の火山性微粉末を使った「シラスコンクリート」の研究です。耐久性に加えて、原料のセメントが普通のものよりも製造過程での二酸化炭素排出量が少ないため、地球温暖化防止にも貢献するコンクリートとして実用が始まっています。
鉄筋の腐食を防ぐ亜鉛メッキ
また、鉄筋の劣化を防ぐことも重要な研究テーマです。コンクリートの建造物には、強度を増すために鋼でできた鉄筋が埋め込まれていますが、この鉄筋のさびをいかに防ぐかは常に課題です。特に海の近くでは、塩分の混じった空気に触れることで鉄筋の腐食が進みやすくなります。そこで、鉄筋に樹脂を塗るなどの対策が取られてきましたが、最近の研究では亜鉛メッキが注目されています。
建造物の点検・補修技術も進化
さらに、建造物のメンテナンスも大切です。建造時には耐久性を見越して設計しますが、コンクリートにひびが入るなどすれば、補修しなければなりません。壊れていないかを定期的に点検する方法や、壊れた部分をより丈夫に修理する方法も進化しています。例えば、昔は人の目で外から見るしかなかった点検も、建物の微振動の様子を計測することで傷を見つける方法などが開発されています。
現在は、地球温暖化による平均気温の上昇や暴風雨の増加が建造物に与える影響の研究や、洋上発電所の需要に備えて、より塩害に強い建造物などの研究が進められています。こうした研究の成果により、100年、200年と安心して住める街がつくられているのです。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 工学部 先進工学科 海洋土木工学プログラム 准教授 審良 善和 先生
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土木材料学、維持管理工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?