公共交通を整備してサステイナブルな都市に
モータリゼーションの問題点
モータリゼーションとは、自動車が社会に広く普及して生活必需品となる現象です。日本の大都市は、モータリゼーションが進む前に鉄道網が発達したことから、移動手段として鉄道が多く使われ、鉄道網に沿って都市が発達してきました。しかし、モータリゼーションが先行した途上国の多くの都市は、車での移動が主流となっています。道路の整備率に対して車が多すぎれば、渋滞が慢性化し、大気汚染も起こり、温室効果ガスも排出します。
交通に対する意識を変える
渋滞や大気汚染は住民に大きな影響を及ぼすものですが、都市に鉄道を整備すれば問題が解決するわけではありません。途上国では、ある程度所得のある中間層において、車はステータスシンボルであり、公共交通で移動するのは貧困層だというイメージが強い国も多くあります。
タイの首都バンコクでは1999年に市街地の高架を走る鉄道が開業しました。しかし、それ以降も郊外の一戸建てに住んで、車で都心に通うのが理想だという意識は根強く残っています。鉄道の開業から20年以上たった最近になって、若者層では都心のマンションに住んで、鉄道で移動する方がいいという価値観が芽生えてきています。鉄道を整備しても、人々の意識が変わるには長い時間がかかります。そのため、デザインの良い車両を採用するなど公共交通にステータス感を持たせ、価値観を変える工夫も必要です。
これからの日本の都市の姿
日本でも同様に、車に依存せず、公共交通を中心として生活できる都市づくりを進めようとしています。とくに、高齢化、人口減少社会を迎え、車に依存した低密度に拡散した都市ではなく、駅などの公共交通の結節点の周辺に生活サービス機能や人口を集約させる、コンパクト・プラス・ネットワークといった都市の形成がめざされています。このように、人口などの動向を見ながら、それぞれ地域の特性に合った土地利用、都市施設、交通インフラをデザインすることが、サステイナブル(持続可能)な都市づくりにつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 都市科学部 都市基盤学科 教授 松行 美帆子 先生
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