生活のしづらさを改善する、精神障害のリカバリー
リカバリーをめざして
リハビリとは、心身の機能を回復するだけではなく、「自分らしく生きられるようになること」という意味があります。一般的には病気やけがの治療後に残った障害に対してリハビリを行うイメージですが、精神障害は病気と障害の線引きが難しく、障害の状態になっても病気の状態に戻りやすい(再発しやすい)のです。そのため、作業療法士は症状が活発な頃から患者に関わり、症状が落ち着いて障害の状態になっても再発しないように、患者が自身の症状を理解・管理する練習をします。生活のしづらさを改善しながら、自分の生活や人生を自分らしく過ごしていけるようにリハビリを行うのです。これをリカバリーと言います。
作業療法を用いたリハビリ
身体機能の障害に対するリハビリでは、運動やマッサージなどの理学療法、言語や嚥下などの言語聴覚療法、障害があっても生活できるように練習する作業療法が中心です。それに対し精神障害では、妄想や幻聴、不安などの症状で通常の社会生活が困難になりやすいため、スポーツやレクリエーション、手工芸などの作業をグループで一緒に行い、活動性を向上、生活のリズムを整えて基本的な生活ができるようにしていきます。生活の幅を広げ、生活の質の向上も作業療法の大きな目的です。例えば、銀行での手続きや買い物などの社会生活に不可欠なことを実際に行って、うまくいかなければ、どうしたらできるようになるかを考えて練習していきます。
作業療法と「認知行動療法」
作業療法の中に「認知行動療法」を取り入れる研究も行われています。例えば幻聴の症状が出てきても、そこに注意を向けず、もともと自分がやりたいことに集中する方法や、気分が抑うつ的になって何もやる気が出ないときの対処法など、作業をしながら作業療法士と一緒に取り組んでいくのです。
精神障害の症状は一人ひとり異なり、暮らし方の希望もそれぞれに違います。グループでの作業療法をうまく使いながら、一人ひとりに合わせたリハビリを考える必要があるのです。それがリカバリーに繋がるのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 奥原 孝幸 先生
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