痛み行動日記が役立つ介護予防? 高齢者の健康寿命を延ばす研究
痛みを抱える高齢者
高齢者の多くは慢性的な痛みを抱えています。すぐに治る一時的なものではなく、長い間続く痛みです。しかも身体の一カ所ではなく、膝や足など複数箇所に痛みを感じている人も多くみられます。高齢者が抱えているこうした痛みは、要介護状態になる原因のひとつだとわかってきました。痛みを気にして運動を控えるようになり、身体機能が弱まっていくという悪循環も起きています。
痛み行動日記で痛みを抑える?
対策を考えるために、まずは痛みを抱える高齢者の特徴が調査されました。その結果、痛みのとらえ方にゆがみが生じていることが明らかになりました。「痛みがあるから何もできない」と、すべて痛みのせいにしてしまうのです。そのため運動量が低下し、痛みが持続しやすくなるのです。
対策として、「痛み行動日記を書いてもらう」という手法が試されました。高齢者に歩数計を配り、1日の歩数と痛みの程度、その日の行動を日記に書いてもらいます。すると日記の書き手は、買い物や旅行など、痛みを抱えていてもできたことがあることに気づけます。痛みは脳で感じているため、意識を変えると痛みの感じ方も変化します。そのため痛みへの向き合い方を前向きにすれば、運動を過剰に控えたり、痛みを気にしすぎたりといった課題を改善できるかもしれません。
健康寿命を延ばすために
現時点では痛みを持っていない高齢者も、将来的に痛みが発生する恐れがあります。特に活動量が落ちている人は痛みを生じる可能性が高いことが明らかになってきました。対策には、身体活動量を向上するプログラムが効果的だと考えられています。例えば、介護予防教室などでよく行われている身体のバランスを鍛える運動などに加えて、日々の歩数を増加するプログラムです。普段の生活でも階段を使うなど、積極的に身体を動かす意識を持つことが重要です。ほかにはどのような運動や生活をすれば、高齢者の痛みや介護を予防して健康寿命を延ばせるのか、一人ひとりの状態に合わせたリハビリ内容の研究が続けられています。
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