エッグサイティングな卵の研究(最新ゆで卵の研究開発)
黄身と白身が逆転したゆで卵
1785年刊行の『万法料理秘密箱』という料理本に、黄身が外、白身が中という「黄身返し卵」のレシピがあります。長らく再現できなかったのですが、江戸時代の生活を踏まえて検証した結果、再現に成功しました。
まずレシピにある「地卵の新しき」は、当時は有精卵でしたから「産みたての有精卵」です。「糠(ぬか)みその中に3日漬けおき」は、糠みそは発酵して温かいから、つまり「孵(ふ)化」の仕組みを利用しているのです。有精卵は温めると3日で卵黄が卵白の水分を吸収して2倍の量に、卵白は半量になります。そして「針にて頭の方に一寸穴を開け」は卵黄膜を破るということです。卵黄は油分を含んで軽いので上に集まるため、その状態で転がしながらゆでると「黄身返し卵」のできあがりです。ちなみに家庭ではストッキングに卵を入れて数百回ぶんぶんコマの要領で回して遠心力で卵殻を割らずに卵黄膜を割った卵をゆでれば、無精卵からでも作れます。
「逆」温泉卵?
黄身は半熟で白身は白くトロトロの「温泉卵」は、70~75℃のお湯に10~15分つけて作ります。黄身は65℃で固まり始めますが、白身は80℃にならないと硬く固まりません。つまり、温泉卵は白身と黄身の凝固温度の違い(加熱ゲル化性の違い)を利用した調理法です。では白身は固まっているのに、黄身は液状のままという「逆」温泉卵は作れるでしょうか? まず沸騰している湯に室温に戻した卵をお玉で入れます。ゆっくり転がしながら5分30秒ゆで、冷水に入れて冷やします。殻をむいて半分に切ってみましょう!
卵には不思議がいっぱい
卵は母乳に匹敵する良質なタンパク質源であり、食べておいしく、健康にもよいと3拍子そろった食品です。同時に、卵はヒヨコを生み出す「生命のカプセル」でもあります。卵の中には、生命のもととなるさまざまな成分や、生命を感染症から守る親鳥から移行した免疫抗体も備わっています。卵にはまだまだ解明されていないたくさんのエッグサイティングな研究テーマが隠れているのです。
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先生情報 / 大学情報
京都女子大学 家政学部 食物栄養学科 教授 八田 一 先生
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