五感に響く言葉たち 「オノマトペ」の世界を探検しよう

「パリパリ」と「バリバリ」
日本語には、音や様子をまねた言葉、いわゆる「オノマトペ」がたくさんあります。例えば、煎餅を食べる様子を表すのに「パリパリ」と「バリバリ」では、印象は大きく異なります。「パリパリ」は軽いかみ応え、「バリバリ」は硬い歯応えが想起されます。「パ」と「バ」という音の違いが、異なるイメージを生み出しているのです。つまり、オノマトペは音そのものの響きによって、意味や印象が変わるというユニークな特徴を持っています。
「ふわふわ」は何を表す?
オノマトペのもう一つの特徴は、「多感覚的」であることです。例えば「ふわふわ」は、触ったときのやわらかさだけでなく、見た目の軽さや空気を含んだ感じも伝えています。視覚や触覚、場合によっては聴覚までを同時に表現できるのが、オノマトペの魅力です。こうした言葉を使うことで、感情や様子を直感的に、豊かに伝えることができるのです。
さらに、私たちは無意識に「もわっと」は長めに、「ぴょこっと」は高めに発音するなど、声、さらには身振り手振りまで使ってオノマトペを表現しています。オノマトペは、言葉を超えて体全体で伝える表現方法ともいえるのです。
オノマトペで表現が豊かに
「チクチクした痛み」や「ズッキーンという痛み」など、オノマトペを使えば、痛みの種類や程度まで伝えることができます。英語にはこうしたオノマトペがほとんどなく、「sharp pain(鋭い痛み)」など比喩的な表現で説明します。調査では、痛みの説明にオノマトペを使ったほうが、相手に伝わりやすいという結果が出ています。また、同じ映像を日本語話者と英語話者に見せて内容を説明させたところ、時に、日本語話者のほうが具体的かつダイナミックに伝える傾向があることもわかりました。日本語の日常会話では平均6文に1回の割合でオノマトペが使われており、こうした日常的な使い方が表現力にも影響を与えていると考えられます。オノマトペは、私たちの感覚や感情を豊かに伝える、便利なツールなのです。
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名古屋大学 文学部 人文学科 准教授 秋田 喜美 先生
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