日本壊滅の可能性も? 将来の破局噴火を地層から探る
破局噴火で日本が壊滅する?
地球は地形や環境が激変するような大規模な火山噴火(破局噴火)を何度も経験してきました。日本でも九州の半分以上が火砕流に覆われるような破局噴火が過去10万年間で5回あったことがわかっています。そのような破局噴火が現代の日本で発生すれば、日本全体が壊滅するほどの被害を受けます。火山の周辺が火砕流に覆われるだけでなく、舞い上がった火山灰が広範囲に降下して1000km以上も離れた都市の電気・水源・交通などのライフラインに重大な影響を及ぼします。破局噴火の発生頻度は小さいですが、発生場ごとの発生頻度をできるだけ正確に明らかにしてリスクを評価することが必要です。
噴火の手がかりは海にも
そこで陸上の火山周辺だけでなく、火山から遠く離れた湖や海底の地層からも過去の噴火の痕跡をたどり、噴火の発生した年代や規模などが調査されています。過去に九州で破局噴火が起こった時、日本列島全域と日本海や太平洋にまで火山灰が到達したことがありました。海の地層は長期間にわたってゆっくりと堆積するため、そこに挟まる火山灰を調べることで、過去500万年間の長期にわたる火山噴火の歴史を地層記録から調べることができます。その結果、九州や東北の北部、そして北海道では過去数十万年間に活発な破局噴火があり、将来も破局噴火が起こりうる地域だとわかってきました。
「天然ガラス」から噴火の様式がわかる
またマグマが発泡して急冷した「天然ガラス」からも破局噴火を証明する試みがあります。火山灰に含まれる天然ガラスの形状を電子顕微鏡で見ると、小さな気泡がいくつもあります。その気泡が大きくなり、電球が割れた時のようにゆるく湾曲した形をしていれば、大規模な火砕流の噴出に伴う火山灰であった可能性が考えられるのです。ただしそれを見極めるための粒子の形状に関する正確な数値基準はまだありません。粒子の形状から噴火の様式や規模を見極められるように、数多くの火山灰の天然ガラスを効率的に分析して数値基準を探る研究が進められています。
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福島大学 共生システム理工学類 教授(学類長) 長橋 良隆 先生
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