講義No.12532 地球科学

日本壊滅の可能性も? 将来の破局噴火を地層から探る

日本壊滅の可能性も? 将来の破局噴火を地層から探る

破局噴火で日本が壊滅する?

地球は地形や環境が激変するような大規模な火山噴火(破局噴火)を何度も経験してきました。日本でも九州の半分以上が火砕流に覆われるような破局噴火が過去10万年間で5回あったことがわかっています。そのような破局噴火が現代の日本で発生すれば、日本全体が壊滅するほどの被害を受けます。火山の周辺が火砕流に覆われるだけでなく、舞い上がった火山灰が広範囲に降下して1000km以上も離れた都市の電気・水源・交通などのライフラインに重大な影響を及ぼします。破局噴火の発生頻度は小さいですが、発生場ごとの発生頻度をできるだけ正確に明らかにしてリスクを評価することが必要です。

噴火の手がかりは海にも

そこで陸上の火山周辺だけでなく、火山から遠く離れた湖や海底の地層からも過去の噴火の痕跡をたどり、噴火の発生した年代や規模などが調査されています。過去に九州で破局噴火が起こった時、日本列島全域と日本海や太平洋にまで火山灰が到達したことがありました。海の地層は長期間にわたってゆっくりと堆積するため、そこに挟まる火山灰を調べることで、過去500万年間の長期にわたる火山噴火の歴史を地層記録から調べることができます。その結果、九州や東北の北部、そして北海道では過去数十万年間に活発な破局噴火があり、将来も破局噴火が起こりうる地域だとわかってきました。

「天然ガラス」から噴火の様式がわかる

またマグマが発泡して急冷した「天然ガラス」からも破局噴火を証明する試みがあります。火山灰に含まれる天然ガラスの形状を電子顕微鏡で見ると、小さな気泡がいくつもあります。その気泡が大きくなり、電球が割れた時のようにゆるく湾曲した形をしていれば、大規模な火砕流の噴出に伴う火山灰であった可能性が考えられるのです。ただしそれを見極めるための粒子の形状に関する正確な数値基準はまだありません。粒子の形状から噴火の様式や規模を見極められるように、数多くの火山灰の天然ガラスを効率的に分析して数値基準を探る研究が進められています。

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福島大学 共生システム理工学類  教授(学類長) 長橋 良隆 先生

福島大学 共生システム理工学類 教授(学類長) 長橋 良隆 先生

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火山地質学

先生が目指すSDGs

メッセージ

明確な目標を持って勉強することは大切ですが、大学入学はスタートです。もし希望通りの進路とは違ったとしても、さまざまな新しいことに触れていれば興味が広がります。私は高校で地学を勉強したことはありませんでしたが、大学で初めて学んだ地質学と野外調査におもしろさを感じて研究者になりました。あなたにも、高校で学んだ教科にこだわらず、大学では積極的にさまざまな分野の授業を受けて世界を広げてください。また、友人や先輩さらに先生たちとの交流を大事にしてほしいです。

先生への質問

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福島大学に関心を持ったあなたは

「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。