新しい表現のかたち 「メディアアート」とは何か
4つの特徴
「メディアアート」は、絵画や彫刻などの伝統的な表現方法とは異なった、新しいテクノロジーを活用した芸術作品の総称です。特徴として、コンピュータやSNSなどのメディアそのものに意識を向けていること、プロジェクターやセンサなどの新しい技術を使った表現方法を用いていること、鑑賞者が参加することで成立するインタラクティブ(双方向)な作品であること、そして新しいテクノロジーが社会に与える影響について問題提起を行うことの4つが挙げられます。
デジタル作品から見る現実の世界
例えば、タブレット端末の画面の中に「仮想の植物の生態系」をつくり出した作品があります。画面をタップすると種が落ちてきて、徐々に植物が成長します。種の中には、枝の分かれ方、花の色や形、葉の形などの遺伝子情報が組み込まれていて、大きく育つと花が咲いて種ができます。種をまき過ぎて密集すると、日の当たらない植物は枯れてしまいます。タイミングや操作による偶然性を織り込んだプログラムであるため、人によって花や葉の形が変わる作品です。植物を成長させる楽しさと美しいビジュアルを通して、実際の自然の複雑さや生き物同士の関係性に気づいてもらいたいというメッセージも秘めています。
「アーティスト」というフィルター
メディアアートの表現はデジタルに限りません。例えば、「木が育った場所の地形をその木に彫刻する」作品は、杉の産地である奈良県の樹齢150年ほどの吉野杉を輪切りにして、その表面に杉が生えていた場所を中心とした周囲の地形を彫り込んだものです。彫刻は、データをもとに自動で削るCNCフライス盤という機械を用いています。物体としての木を見ると同時に、周囲の地形を見ることで、鑑賞者の視点が内から外へ広がっていくのです。アーティストは、自分のフィルターを通して観察した世の中を、作品というかたちで外に出していきます。鑑賞者はその作品を見ることで、世の中を別の視線から見つめることになり、新しい気づきを得ることになるはずです。
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先生情報 / 大学情報
長岡造形大学 造形学部 デザイン学科 准教授 平原 真 先生
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