土器を作ると暮らしがわかる! 縄文時代の生活を探る実験考古学
土器を実際に製作
「実験考古学」は、過去の人々が使っていた物を実際に製作して研究する学問です。遺跡から出土した遺物を再現して使うことで、その材料や用途を調べます。例えば土器は、煮炊きや貯蔵などさまざまな場面で役立つ道具ですが、その材料にも注目することで、当時の人々の暮らしがさらに見えてくるのです。
新たに判明した縄の材料
縄文土器の特徴である「縄目模様」は、土器の表面に縄を押しつけて作られています。模様には不規則なシワがあることから、アサなど植物の繊維をより合わせた縄が使われたと考えられてきました。しかし一部で模様にもっと規則的なシワがある縄文土器も発見されました。人が作った縄ではそこまで規則的なシワにはなりません。そこで、アサ縄とは異なる材料として候補に挙がったのが、規則的な維管束を持つツル性植物です。ツルの部分をそのまま土器に押しつけると、模様のシワも規則的になります。このような土器は縄文時代後期の神奈川県西部や静岡県東部など、限られた時代と地域で発見されています。その地域内では人々の交流があり、ツルを使った土器の作り方を共有していたのかもしれません。
残っていない道具はどう調べる?
土器や石器と違い、釣り糸のように土の中で形が残りにくい道具の場合はどう研究すればいいでしょうか。例えば、繊維を単により合わせただけでは釣り糸は水の中でほどけてしまいます。水の中でもほどけない糸を作るためにはより合わせる回数を多くする必要があります。釣りに適した長い糸を手だけでより合わせるのは大変なので、何か道具を使っていた可能性があります。ここでヒントとなったのが、昭和の頃まで漁師の間で継承されてきた釣り糸の製法です。紡錘車(ぼうすいしゃ)というコマのような重りに繊維をくくりつけて回転させて糸を作りましたが、縄文時代の遺跡からも紡錘車と似た土製の重りが出土しています。かつての人々も、現代と同じような道具で釣り糸を作ったと考えられます。このように別の時代にも目を向けることで、推測が可能になるのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 文学部 歴史学科 考古学専攻 准教授 宮原 俊一 先生
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