「ちがい」を力に! 多文化共生教育が育む未来の地球市民
「グローバル化の時代」と言うけれど……
観光や留学、「出稼ぎ」といった短期的な目的ではなく、日本に定住し、地域市民として生活することを希望する外国の人が増えています。「グローバル化が進む日本」と言われながらも、安定した仕事をもち、パートナーと暮らし、子どもを育てる、そんな誰もが生まれながらにもつ権利は、必ずしも守られているとは言えません。そのような問題の1つが、外国にルーツをもつ子どもが教育を受ける権利保障の問題です。原則として日本「国民」を適用対象とする憲法などの法制度は、ともすればそのような子どもを公教育から排除しかねない側面をもっています。「教育先進国」を公言してきた日本ですが、こうした「子どもの権利」侵害の状況を国連などからも批判されることとなりました。
子どもの教育保障と「多文化共生教育」
2019年に初めて文部科学省が行った全国実態調査の結果、日本に在住していることが確認された外国にルーツをもつ子どもの半数に当たる約2万人の子どもが、学校に在籍していないことが明らかになりました。それ以降、そのような子どもたちの受け入れ体制が整備されてきましたが、地域や学校ごとに大きな格差があります。法制度の改善とともに、教育現場に求められるのが「多文化共生教育」です。子どもたちに日本語の習得と日本社会への適応ばかりを求めるのではなく、その子らしさを形づくる母語や母文化を尊重して、子どもも大人も共に学びあえるような取り組みが、学校や地域に求められています。
地球市民教育としての多様性の尊重
こうした取り組みは、「ちがい」を豊かさと力に変えて、国籍だけでなくセクシュアリティや障がいも含めた、子ども一人ひとりの個性を尊重するインクルーシブな社会の実現につながります。それは、未来社会のために、SDGsに代表されるような地球的課題(Global Issues)に向き合う人を育む「グローバル・シティズンシップ(地球市民)教育」の1つとして取り組まれる教育実践なのです。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 教育学部 教育学科 初等教育学コース 准教授 岩坂 二規 先生
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教育社会学、国際教育学、人権教育学先生が目指すSDGs
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