地球中に広がる海中マイクロプラスチック、検出困難な粒子を探れ!
海中の粒子「マイクロプラスチック」
海の環境は光に支配されており、光の分布を左右するのが濁りです。濁りの原因は粒子であり、そのひとつとして「マイクロプラスチック」が挙げられます。マイクロプラスチックはもともと海になかった粒子なので、その挙動や生物への影響も未知数です。例えば発がん性のある難分解性有機汚染物質が付着すると、マイクロプラスチックをのみ込んだ生物に悪影響を及ぼすかもしれません。いずれ人間にも影響が出る可能性があるので、調査や対策が求められています。
マイクロプラスチックは回収困難
マイクロプラスチックはとても小さな粒子(5mm以下)で、沿岸はもちろん、太平洋の真ん中や南極・北極といった人の影響の少ない海域にも分布しています。そのため、一度海に広がったマイクロプラスチックを回収することは不可能です。プラスチックの使用量を減らして、正しく処理して、できるだけ海域へ出ないようにしなければなりません。現在、世界中の研究者が海域のマイクロプラスチックの分布調査を行っています。しかし、従来の調査では、350マイクロメートルの小さな網目のネットで海面をすくっていました。そこに集まった様々な粒子の中からプラスチックをより分けて分析しており、非常に時間がかかりました。また、網目より小さなマイクロプラスチックの回収は困難でした。現在、より細かなマイクロプラスチックの採取法、分析法を研究しています。
分析をより簡単に
回収したマイクロプラスチックの種類を分析するとき、プラスチックらしき粒子の一粒ずつを赤外分光器で計っています。また微細なマイクロプラスチックの測定には、顕微鏡付きの赤外分光器が必要になります。海水中にはマイクロプラスチック以外のさまざまな粒子が存在します。今までの手法ではプラスチック計測を妨げる粒子を取り除く過程が不可欠で、膨大な労力と時間を要しています。今後、水中のマイクロプラスチックを直接測定する手法の開発が求められています。
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東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授 荒川 久幸 先生
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