勝つためには、「勝ち」にこだわるな!?
アスリート個人の立場で
スポーツの現場では、「練習ではうまくいくのに、試合だと緊張して実力を発揮できない」という問題がしばしば起こります。これに対しては、「リラックスできる方法を見つける」というのも対処法のひとつですが、適度な緊張感を持ったほうが良い結果が出る場合もあります。競技によってもアスリート本人によっても最適な緊張度は異なるため、アスリート個人の立場でどのような時に実力が発揮されるか考えることが求められます。
自分の心をコントロールするために
スポーツ心理学の研究においては、「本番で実力を出す」ためには、「結果のみを重要視するのではなくそのために自分ができることにフォーカスする」「何も考えずに取り組む」などの対処法が、実際に効果があることがわかっています。
「勝つ」ことにこだわるあまりに緊張して結果を出せないというのは皮肉な話ですが、逆に言えば、考え方ひとつで自分の緊張をコントロールすることもできるということです。行動にルーティンを取り入れることで集中力を高めるのもそのひとつです。
日本に合ったメンタルトレーニングを
日本のスポーツの現場では、指導者の影響力が大きく、指導者の考え方が選手に反映されやすいことが指摘されています。心理学には、「動機づけ雰囲気理論」と呼ばれる、やる気が高まる集団作りのための理論があります。集団を包む雰囲気には、結果を重視する「成績雰囲気」と、成長を重視する「熟達雰囲気」があり、指導者が「成績雰囲気」を作るタイプの人だと、選手の考え方も能力重視に偏り、忍耐力がつきにくいという研究結果があります。「熟達雰囲気」の集団では、自己効力感が高まり、個人のモチベーションに好影響があるとされています。
日本では、まだまだスポーツ心理学の成果を取り入れた指導が進んでいないと言われますが、欧米型の指導法をそのまま日本で実践してもうまくいくとは限りません。日本の文化的背景を考慮し、研究結果をどのように現場に反映させるかを考えることも、研究者の課題となっています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
太成学院大学 人間学部 健康スポーツ学科 助教 辻田 佳保里 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
スポーツ心理学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?