スポーツをする障がい者に寄り添う、パラスポーツ看護とは

スポーツをする障がい者の看護
2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックを契機として、パラスポーツやパラアスリートの存在が身近になりました。有名アスリートには企業の協賛がつくようになったものの、それ以外のパラアスリートは、まだ十分な認知・支援を受けているとはいえません。パラアスリートは、障がいがあることでさまざまな課題や困難を抱えているため、メディカルサポートが必要です。近年ではスポーツを始める障がい者やパラアスリートを支える看護の重要性も知られるようになってきました。
発揮される観察力
ある国際大会で、日本選手が次々に体調不良に陥ったことがあります。衛生面に関する感染が疑われました。何が原因かと観察すると、選手が滞在する居室の清掃に用いる雑巾を、便槽の水で洗って使用していたことが分かりました。障がい者は手でいろいろな場所を触る機会が多く、そこから感染が広がったと推測されます。掃除の方法が日本の常識と異なることから生じた事態ですが、看護の基本である観察力を発揮することで、問題を突き止めた事例といえます。
看護はアート
看護学は科学的な分野として確立されていますが、「創造性」が重んじられるアートに通じる側面もあります。例えば、若いパラアスリートの精神的な落ち込みに気づけば、寄り添いながら前を向く方法をともに探します。あるいは、40代で脊髄を損傷し、その後もがんと闘い続け、100歳目前で車いすハーフマラソンに出場したA氏のようなアスリートに接すると、障がいや加齢による衰えがあっても、必死に頑張ろうとする姿“生き様”が同じ障がいがある人やその家族に勇気と感動を与えているのです。その苦労や喜びを感じ取り、広めていくことも「創造的」な営みといえるでしょう。
看護学が確立してきた理論と、患者に徹底的に寄り沿う姿勢、そしてわずかな変化も見逃さない観察眼を用いて選手を支えるパラスポーツ看護は、「パラスポーツ看護学」として一つの学問となることが期待されています。
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