劣化要因を解明しコンクリート構造物の長寿命化を
丈夫そうなコンクリート構造物も劣化する
あなたの周りにある多くの構造物にコンクリートが使用されています。コンクリートは耐久性に優れ、さまざまな形状に沿った加工ができる便利な材料であることから、私たちの生活にかかせないものとなりました。そんなコンクリートを使った構造物も、さまざまな要因により劣化していきます。今後の地球環境保護やコストの面からも、「古くなったら造り直せばいい」という考え方ではなく、長持ちさせる方法を考える必要があります。
劣化の原因とその進行を予測する
コンクリート構造物には、荷重による負荷が繰り返されることにより生じる疲労、本来アルカリ性であるコンクリートが二酸化炭素の影響を受けて劣化する中性化、そのほか塩害、凍害、化学的侵食、アルカリシリカ反応などによって、ひび割れや変形のような劣化が生じます。これらの劣化は、その構造物が建っている土地の環境によっても左右されます。例えば、海辺の建物なら塩害が、寒冷地であれば凍害が、酸性の温泉地の近くだと化学的侵食が起こりやすい傾向にあります。また、使用する砂や石によってはアルカリシリカ反応という劣化を生じる場合があります。さらに、これらの劣化が複合的に生じることでその劣化の速度が早まります。そこで、土木工学の研究機関では、それぞれの劣化機構の解明や劣化の進行を予測するための研究が行われています。
めざすのは長寿命化
多くの研究の結果、中性化や塩害に関しては劣化を予測する数式のモデルができてきましたが、凍害、化学的侵食、アルカリシリカ反応や複合劣化についての予測についてはさらなる研究が必要です。そして、コンクリート構造物を健全な状態で維持するためには適切なタイミングでの点検や、劣化の種類に合わせた適切な補修が必要です。それぞれの劣化度合いを判断するための指標の作成や、劣化状況に応じた補修材料や補修工法の開発も進めなければなりません。私たちの持続可能な社会を実現するため、造るだけではなく守る方法を確立することも重要な研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 社会システム土木系学科 教授 黒田 保 先生
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