オーダーメイドの川づくり 治水と生態系を両立する河川土木技術

オーダーメイドの川づくり
これまで水害を起こさない川をどうつくるかという治水の視点が重要視されてきましたが、1997年に河川法が改正され、環境(水質や生態系保全)にも配慮する川づくりが始まり、環境と安全を両立する研究が進められています。
川には、地形や気候によって、特徴的な生態系が形成されます。川が持っている異なる特徴を取り入れたオーダーメイドの川づくりができれば、理想の川づくりになります。
生態系をとらえる技術「環境DNA」
以前は、川の生態系を知るには生き物を採集する必要がありましたが、今では、川の水をくんで分析するだけでわかるようになりました。川の水には、そこに生息する生物のDNAの断片(環境DNA)が含まれています。それをPCR法で増幅してデータベースと照合すると、生物の種類を特定できるのです。すべての川でこの調査を行い、水害や工事で川の状態が変わった後に、回復度を測る基準にする取り組みが進んでいます。
仮想空間でイメージを共有
川の中の地形は生物の住処に影響するため、地形の把握は重要です。以前はほとんど手作業で測量してきた河川地形ですが、最近では、航空レーザー測量という方法で川底の凹凸まで正確に測って3Dで表示できます。また、従来の工事では、単純な形の施工になりがちでしたが、複雑な自然の地形を再現するために、ICT技術を搭載したブルドーザーなどの重機を自動制御し、きめ細やかに動かす技術も開発されています。
さらに、3D画像のゲームをつくるゲームエンジンを使って、測量データに基づく川の姿をVR(バーチャル・リアリティ)空間に再現する研究もあります。川づくりには、住民、行政、工事関係者などさまざまな人の話し合いが欠かせませんが、その時、同じ設計図を見ても、皆が同じ川の姿をイメージできるとは限らず、考えを共有できない可能性があります。VR空間で川のビジョンを共有できれば、理想の川づくりに近づけるものと期待されています。
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先生情報 / 大学情報

山梨大学 工学部 工学科 土木環境工学コース 准教授 大槻 順朗 先生
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河川工学、生態学、水工学、環境学先生が目指すSDGs
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