SNSに潜む罠

知らないうちに被害に
インフルエンサーが、企業から報酬をもらった広告であることを隠して、SNSなどで商品を宣伝することを「ステルスマーケティング(ステマ)」と言います。ステマは消費者が商品を選ぶうえで誤解を招きかねないため、現在の日本では景品表示法で不当表示にあたるとして、広告主が規制の対象となっています。一方で、消費者の7割以上がステマの被害に遭っているという調査結果もあります。
見えないステマを可視化する
現代の社会課題と言えるステマを、データサイエンスの手法で解決に近づけた研究があります。
まず、現状分析として「広告主」「広告会社」「インフルエンサー」「消費者」などへのヒアリングが行われました。次にインスタグラム内の広告708件を検証したところ、76%の広告がステマに該当すると判明したのです。さらにステマに関する先行研究も踏まえ、#広告、#PRなどの広告であることを示す文言の記載がない「無記載」や、#広告、#PRなどの文言がアイコンなどで隠された「隠秘」など、ステマの手法を6つの型に分類しました。また、ステマによる消費者の被害内容を「金銭」「リンク」「時間」の3種に分類しました。これらを点数化し、広告の健全度合いを格付けする「ステマ指数」を考案したのです。
このステマ指数を前述の広告708件に当てはめたところ、健全な広告(格付けAA)が24%ある一方で、悪質な広告(格付けE)は45%と、広告の二極化も確認されました。
データサイエンスで社会課題を解決
現行のステマ規制は商品の広告主のみが対象で、ステマに加担する広告会社やインフルエンサーは対象外なのが実情です。そのため研究では、ステマに関する消費者への周知活動だけでなく、関連省庁や国会議員に対して実態に即した法整備を提案するなどのアクションも進められました。
データを分析して課題を分類・構造化し、解決策を導くというデータサイエンスの手法は、このような身近な社会課題の解決に役立つのです。
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先生情報 / 大学情報

文京学院大学ヒューマン・データサイエンス学部 ヒューマン・データサイエンス学科(仮称) ※2026年4月設置構想中 (現:外国語学部) 教授渡部 吉昭 先生
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