災害現場で働く人々を支えるためにできることは?
災害現場で働く人々
日本は自然災害が多い国です。災害現場では、救助隊員や医師、看護師などさまざまな人々が協力して被災者の救助や救護にあたっています。特に救助隊員たちは、二次災害の危険性が高い場所で活動することになります。肉体的にも精神的にも強いストレスにさらされるはずですが、これまで科学的な証明はありませんでした。適切な対策を考えるためにも、現役の救助隊員を対象にしたストレス研究が行われています。
救助隊員のストレスを調べる
救助隊員の多くは、倒壊した建物などの閉鎖空間で2人1組となって生存者の探索を行います。研究でも閉鎖空間を模した場所が用意され、探索前後のストレスが測定されました。指標となるのは、体液に含まれる「コルチゾール」と、心臓の周波数です。ストレスを感じるとコルチゾールの分泌量が増えます。また、心臓の周波数は交感神経と副交感神経の状態を示しており、ストレスを感じているときは交感神経が優位になります。探索後はコルチゾール量が増え、交感神経が活発になったことから、隊員がストレスを感じていることが科学的に証明されました。一方で、トランシーバーで連絡を取り合いながら探索を行うとストレスが軽減されることがわかりました。騒音などに左右されず円滑に意思疎通をする手段は、救助隊員の助けになるといえます。
災害現場で活躍するために
災害現場では救助隊員同士だけでなく、医療職との連係も重要です。しかし普段病院内で活動している人がいきなり災害現場に行っても、戸惑うばかりになりかねません。事前に救護班内での役割を学び、過酷な環境や災害時の活動を体験する必要があります。
看護師養成のカリキュラムが改正されたことで、災害看護教育の強化が始まりました。教育方法はまだ確立されていませんが、災害現場を想定したロールプレイ形式の演習が効果的だと考えられています。こうした実践形式の演習がもたらす効果や、よりよい教育方法などの研究は、まだ始まったばかりなのです。
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先生情報 / 大学情報
秀明大学 看護学部 看護学科 教授 北林 司 先生
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先生への質問
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- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?